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視点:CIO

2%への異なる道

  • 2024年6月3日 (5 分で読めます)

欧米の中央銀行は今後数年間、2%のインフレ目標を堅持する可能性が高いと見ています。しかし、世界金融危機後の10年間のようにインフレ率が目標を大きく下回るのではなく、今後はインフレ目標を大きく上回りすぎないように政策を設定する必要があるかもしれません。これは、将来的に金利の均衡水準が高くなることを意味する可能性があります。当面は、利下げは限定的であり、特に社債や株式のリスクプレミアムが低いことを考えると、キャッシュから債券や株式に資金が急激に移動する可能性は低いと思われます。しかし、中央銀行がインフレ目標を達成するためにリセッション(景気後退)を画策しない限り、ハイイールド債券と株式の投資戦略には依然として投資機会があると見ています。 


政策は上手くいかなかったのか? 

インフレ抑制に関して中央銀行に慢心のようなものがあるとすれば、それは金融危機後の時期に由来すると考えています。2010年から2020年にかけて、連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)はいずれも平均2%を下回るインフレ率を達成しました。FRBは2012年1月、2%のインフレ率(個人消費デフレーター(PCE)で測定)という明確な長期インフレ目標を正式に採用しました。その時から2020年3月の新型コロナ感染拡大の直前までの間、コアPCE率は99回の月次観測のうち91回で2%を下回っていました。

2%は簡単だった

英国は、ポンドが欧州の為替レートメカニズムから離脱した後、1992年にインフレ目標を設定しました。しかし、1997年5月の総選挙で労働党が勝利した後、BOEが運営上の独立性を認められたとき、この目標が金融政策の基盤となりました。米国と同様、世界金融危機後の10年間の大半で、インフレ率は目標を下回りました。2011年5月から2021年5月までの10年の期間を2年ごとに5回に分けると、消費者物価指数の上昇が各2年間で2%を下回ったのは3回であり、また、2017年5月から2019年5月までわずかに上回っただけでした。

しかし現状は

2021年から2022年にかけて、インフレ率は急上昇しました。市場は悪影響を受け、中央銀行は積極的に対応しました。そのころには、インフレ目標政策について疑問が提起されました。インフレに関する予想は、パンデミックに関連した一過性の供給ショックとの見方から、二次的影響と長期的なインフレ動向の変化に対する懸念へと発展しました。執筆時点、市場で懸念されているのは、サービス部門の価格の粘着性、賃金の高すぎる伸び、そして地中海付近の不動産価格上昇、飛行機の満席やホテルの満室の状況、ニューヨークのレストランでの100ドルのハンバーガーなど、価格と経済活動が大きく高まっている実際の状況です。中央銀行の政策立案者の間で公然とは議論されていないことは、深刻な景気後退がない限り、2%を下回ることができないかもしれないということです。

物価への影響の変化

インフレは緩やかになってきたものの、市場でよく参照されるインフレ指数の最近の月次変化は、2010年から2020年までの期間の平均を大きく上回っています。2008年から2009年にかけての金融危機をきっかけに、ディスインフレ(インフレが鈍化していく状況)は、経済のグローバル化とバランスシートの縮小、そして多くの消費財やサービスのコストに対するテクノロジーの影響によって引き起こされました。あの頃に戻るには、原材料価格の下落、低コストの輸入品割合の増加、大量消費市場における新たな破壊的なビジネスと流通の取り組み(例えば、かつてのスーパーマーケット戦争)、そしておそらく失業率の上昇などがうまく組み合わさることが必要になるでしょう。それどころか、原材料の供給への地政学的リスクや保護主義的な貿易政策、利潤保護は、特に需要が停滞している時には、逆の作用を引き起こす可能性があります。需要が圧迫されている場合にだけ、供給側は総インフレを和らげるために価格を引き下げる必要があると感じると思います。


均衡金利の上昇

2022年から2023年にかけての状況が再び到来するとは考えていません。しかし、投資家としては、中央銀行はインフレ率が2%を持続的に下回るのを防ぐのではなく、インフレ率が2%を持続的に上回らないように金融政策を設定することを覚悟する必要があると見ています。これは、まさに、FRBの利下げ開始のタイミングについて、投資家が予測することに自信を無くしつつある現状に当てはまると思います。

金利の中期的な見通しには、潜在的に重大な影響があります。2010年から2020年にかけて実質政策金利がマイナスだったのは、中央銀行が債務デフレと戦っていたからです。しかし、これは完了しました。ここで、インフレ率が2%を超える傾向があると仮定します。2%目標を堅持するためには、実質金利がプラスにとどまる必要があるとみられ、その場合には、名目政策金利は米国と英国で3%-4%、ユーロ圏で2%-3%の範囲にとどまることを示唆しています。金利がどの程度その範囲を上回ることができるかは、リセッションや余剰生産能力の増加、失業率の上昇を画策することで、インフレ率を強制的に引き下げようとする政策意欲にかかっています。また、目標範囲を少し上回るインフレ率で生活することは、他の選択肢よりも社会的には有益であると思われます。

キャッシュを手放せない 

現在、キャッシュ資産や短期債券戦略に投資している投資家は、利息収入の恩恵を受けていると思われます。キャッシュから抜け出すことは簡単な決断ではありません。1年ほど前は、欧米の中央銀行が大幅な利下げに対する市場の期待を促していたため、短期金融市場や銀行預金から債券戦略や株式戦略に資金流入が急増する可能性があるとの期待がありました。しかし現状(執筆時)では、社債や株式のリスクプレミアムが縮小していることや今の金利見通しを考えると、その可能性は低いと思われます。

金利見通しでは、量的緩和(QE)期間よりも2008年以前に近いものになると思われます。これは、比較的リスクの高い資産のリターンについてハードルレート(最低限必要とされる収益率)がキャッシュよりも高いことを意味します。また、長期利回りが大幅に低下する可能性は低いことも意味します。債券の大きな動きは短期金利の低下によるイールドカーブの再調整と思われますが、それはゆっくりとしか起こらないと見ています。筆者としては、債券の短期デュレーション戦略への投資が優位と考えています。

また、市場では、債券戦略は2022年以前よりも投資妙味がある戦略として、総じて支持されていると見ています。利回りはインフレ率よりも高い水準にあります。その為、将来の債務のキャッシュフローを満たすために債券を使用する機会が増えると見ています。複利は影響力があると考えられます。今後数カ月でみると利下げがあまり大幅には行われないとしても、債券戦略は投資すべき戦略ではないというわけではありません。実際、リスクに対するリターンの関係は、金利があまり動かない方がよくなると思われます。債券市場価格のボラティリティはここ数カ月、低下を続けています。また、額面を下回る価格で取引されている債券銘柄も比較的多くあります(デフォルトしない限り、額面で満期を迎えます)。ICEユーロ社債指数では現状、発行済み銘柄の82%が100(額面)未満、53%が95未満、29%が90未満となっています。キャリー(市場の状態に変化がない前提で、債券から一定期間内に得られるインカム・ゲイン)とプル・トゥ・パー(債券価格が最終的に満期時の額面に近づく動き)は、市場の金利変動のタイミングよりも興味深い債券戦略です。

多くを予測することは困難

 様々な予測を行うことは悪いことではありませんが、なるべく多くのことを予測しようとするのは非常に困難です。というのも、将来の結果は様々な変化の確率の後に成り立つものだからです。したがって、最善の策は、それぞれが投資家として最も快適だと感じることを考えることです。それは多くの人にとってキャッシュかもしれません。一方で、筆者は金融市場の専門家として、キャッシュよりも高いリターンをもたらす可能性のある投資テーマがあると考えています。テクノロジー株式への投資戦略はその一つです。つまり、企業は人工知能(AI)機能を強化するために設備投資を増やしているために、その結果、データセンターやケーブル、冷却システム、及び(再生可能)エネルギーを供給する企業は業績を拡大する可能性が高まっていると見ています。ハイイールド債券はもう一つのテーマと考えています。つまり、財務レバレッジの比較的高い企業に対する資金調達リスクとして、景気敏感企業のスプレッドは最近広がってきています。米国のハイイールド債券市場の8%という利回り水準を見ると、米ハイイールド債券戦略は、投資適格市場の多くの部分でキャッシュよりも高い利回りを獲得することが難しい現状では、投資機会があると見ています(また、金利の変動に対してリターンとリスクの関係が非対称性を示す短期デュレーション戦略が優位と考えています)。

量的緩和(QE)の世界では、投資家は、プレミアムを支払う意味を含んで、比較的格付けの高い債券やキャッシュに投資していました(一方、欧米の中央銀行は買い手として機能していました)。中央銀行が買い取る資産のリターンは小さい一方、債務とデフレの関係性においてリスクにさらされている資産のリターンは大きくなる可能性があるという二者択一の状況でした。しかし、現在はそれとは異なる状況です。キャッシュが収益をもたらしていて、投資家は高めのリターンを得る為に金利デュレーションのリスクを取る戦略を行う必要性も動機もほとんどないように思われます。市場では、社債と株式のリスクに投資する戦略が功を奏しており、マクロ環境ではこの優位性が続くように見えます。しかし、もし先進国の中央銀行の2%のインフレ目標が破綻したと見られる時には、その後市場に波乱が起こる可能性があります。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

パフォーマンスや市場のデータの出所: レフィニティブ・データストリーム、ブルームバーグ、特に言及の無い限り2024年5月30日現在。

(オリジナル記事は5月31日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

本資料で使用している指数について

ICEユーロ社債指数:ICEデータ・インデックス社が公表しているユーロ建て社債の値動きを示す指数です。

※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。

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