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マクロ経済

株式市場の見通し:短期と長期のバランスを考える

  • 2022年11月14日 (7 分で読めます)

キーポイント

  • 欧州の短期的なマクロ経済状況は厳しいものの、欧州株のバリュエーションは少なくとも底を打ったように思われる

  • 中国株のバリュエーションは大きな打撃を受けたものの、新型コロナウイルス政策が緩和されれば、上昇する可能性がある

  • 米国には地理的な優位性があり、投資の観点からも、同国においては世界的な長期構造トレンドが継続している

2022年のリスク資産は厳しい状況にあり、特にグローバル株式は年初来で17%も下落し、世界的な株安となっています。1

今年は大きな逆風が吹いています。パンデミックの余波でインフレ率が高騰し、金融引き締め政策が取られ、さらにウクライナ危機でエネルギー価格とエネルギー株が高騰しています。

株式市場では、エネルギー関連株が年初来で約64%上昇した一方、情報技術関連は32%、通信関連は44%下落しました。2 この違いは、現在の地政学的・経済的背景を示すもので、エネルギー価格は需要により高騰し、テック株への期待はGDP成長率の鈍化を背景に弱まっています。

伝統的エネルギー関連銘柄の今年のアウトパフォーマンスは、いつまでも続くものではないと思われる一方、テクノロジーやクリーンエネルギーなどの長期的な成長ストーリーは、依然として力強いものです。長期的に見た場合、IT株の1株当たり利益は安定的に成長していますが、エネルギー株は原油価格の上下を反映して、はるかに変動が大きいのです。3

地域で異なる状況

今年に入ってからの企業収益の強靭性は目覚しいものがあります。しかしながら、マクロ指標が悪化していることから、企業の利益には若干の下押し圧力がかかると見ています。問題は、それがどのような軌道をたどるのかで、つまり、短期的に鋭い打撃を与えるのか、それとも長期になるもののそれほど深刻ではないのか、ということです。当社は、後者の結果を示唆する証拠があると考えます。

現在、世界の株式市場はすべてが同じ段階にあるわけではありません。

中国、アジア、欧州、英国では、悪いニュースはほぼ織り込み済みで、株価収益率(PER)は過去の長期平均を6%~30%下回る状態で取引されています。しかし、米国は長期PER平均をわずかに上回って取引されています。4

ウクライナ問題で何らかの好材料があれば、欧州の株式市場にとって短期的に大きな恩恵となるでしょう。これにより、短期的にアウトパフォームする可能性があります。しかしながら、長期的な成長ドライバーはすべて健在であり、そして欧州とは異なる米国は長期的に重要な地域であると当社は考えています。 

いかなる市場も落ち込み、そして多くの困難が残されていますが、それでもチャンスは生まれます。悪材料の洪水にもかかわらず、2023年に向けて楽観的になるべき理由はあると当社は考えますが、投資家にとっては、短期的アプローチと長期的アプローチのバランスをとることが重要になります。

短期的アプローチ

欧州はエネルギー危機で大きな打撃を受け、年初来で株価は18%下落、インフレ率は10月に10.7%と過去最高を記録し、経済の見通しは今後数四半期にわたって不安定な状態が続くと思われます。5 物価上昇に対処するため、欧州中央銀行(ECB)は10月に2カ月連続で75bpsの利上げを行い、基準中銀預金金利は1.5%と2009年以来最も高い水準となりました。この動きは、ECBが引き続きインフレ抑制に重点を置いていることを反映しています。

ユーロ圏のGDP成長率は、4~6月期の0.8%から7~9月期には0.2%に減速しました。全体的に良いニュースは少なく、現時点では2023年に全体でマイナス0.5%と縮小が予想されています。6  しかしながら、重要なことは、市場がネガティブなニュースフローを織り込んでいることです。同様に、ユーロ圏の4大経済圏と英国はいずれもインフレを背景にした対策を導入しており、今後数カ月の間にさらなる対策が発表されるものと思われます。7 各国政府は、エネルギー危機に対して相互に解決する努力を行い、潜在的な経済的悪影響を劇的に減少させました。

全体的に市場センチメントは悪く、投資家は売り越し、バリュエーションは底値とまではいかないまでもほぼ底値に近いところまで低下しています。マクロ経済状況は非常に不安定ですが、こうした環境はしばしば長期投資家が投資に目を向けるときとなります。また、ウクライナ危機が緩和されれば、少なくとも短期的には欧州市場は大きく好転し、銀行や資本財、化学や自動車メーカーなどのエネルギー集約型産業などのシクリカルなセクターが恩恵を受ける可能性が高いことは確かです。

その他では、中国が上昇する可能性があります。株価バリュエーションは歴史的な低水準に落ち込み、中国は、ゼロコロナ政策の影響、不動産部門の不振、政府による民間部門の抑制をめぐる問題など、いくつかの重大な課題に直面しています。

しかし、中国経済は2023年前半から新型コロナウイルス規制が徐々に緩和され、消費者と企業の需要が回復していくため、再開に向かうと思われます。また、政府はこれまで民間企業に対してかなり厳しい態度を取ってきたことから、何らかの譲歩をするのではないかと当社は考えています。これらが実現すれば、中国市場は適度な反発を享受するはずです。最近、ゼロコロナ規制緩和への期待から相場が上昇し、中国が全面的に再開すれば20%程度まで上昇するとの見方も出ていますが、あくまで短期的なものです。8

長期的アプローチ  

欧州や中国と比較すると、米国は比較的良好な状態にあります。米国の7~9月期の経済成長率は2.6%(前期比年率換算)となり、市場予想を上回り、4~6月期の0.6%減から急回復しました。9

また、金利サイクルのピークが見えつつあり、インフレ率はすでに下がり始めています。政治的には、中間選挙の結果、今後2年間は議会は足踏み状態になるとみられ、特に悪いことも良いことも起こらないと思われます。

大局的に見れば、米国は経済的に非常に分散しており、エネルギー安全保障の度合いも高く、人口動態も良好で、雇用も安定しており、起業家精神も旺盛です。クリーンテクノロジー、オートメーション、デジタル化、バイオテクノロジーなど、世界的な成長ドライバーはすべて、この地域に集中しています。

また、最近制定された2つの法律、すなわちCHIPSおよび科学技術法、インフレ抑制法も大きな追い風となります。

2022年8月にバイデン米大統領が署名したCHIPS法は、半導体生産などの米国技術の増強と「再構築」のために2,800億ドル(約39兆円)の投資を行うものです。ホワイトハウスによれば、「米国の製造業、サプライチェーン、国家安全保障を強化し、研究開発、科学技術に投資する」ことで、米国が「ナノテクノロジー、クリーンエネルギー、量子コンピュータ、人工知能など明日の産業のリーダーであり続ける」ことを確実にし、これらはすべて、すでに起こっている構造的傾向を反映しています。10

また、今年8月に成立したインフレ抑制法(IRA)は、米国に大きな変化をもたらし、世界銀行は、産業の脱炭素化に劇的な変化をもたらすと予想しています。11

基本的にIRAは、民間企業による脱炭素化を促進するために制定されたものです。IRAは、クリーンエネルギーへの投資、医療費削減、税収増を目的に、約5,000億ドル(約70兆円)にのぼる新規支出と税制優遇措置を計上しました。

IRAは、米国が主導権を握ると思われていなかった分野の進展を加速させています。遅れをとっていると見られていた米国は、政策と経済的な機会に後押しされ、今や脱炭素社会の重要なリーダーとなる可能性があります。

バイデン大統領は、2030年までに30ギガワットの洋上風力発電を実現するために数万人の労働者を雇用する目標を掲げています。これは、新しい雇用を創出しつつ、1,000万世帯にクリーンエネルギーを供給するのに十分な発電量です。12

しかし、米国の未来は明るいと思われるものの、S&P500種株価指数は年初来で16%下落し、今年の市場は躍進とは言えないのが現実です。13 しかしながら、構造的成長分野の一部では健全なバリュエーション修正が行われており、極めて重要なのは、ファンダメンタルな長期トレンドは変わっていないということです。クラウド化が進み、ソフトウェア革命が進み、オートメーションは進化し、成長し続けるでしょう。当社が考える最もクォリティが高い企業のバリュエーションは、決して低くはないものの、少なくともより魅力的な水準にあると言えるでしょう。また、金融引き締めが終わり、インフレがある程度緩和されれば、世界的に株式投資センチメントが高まるでしょう。

慎重かつ楽観的な見通し

今、欧州はエネルギー危機の嵐の中にあります。短期的なマクロ経済は厳しいですが、バリュエーションは底を打ったように見えます。

ウクライナ情勢が少しでも解決すれば、消費、産業ともに大きな恩恵があるはずです。同様に、中国で新型コロナウイルス政策がさらに緩和され、経済活動が活発化すれば、輸出の観点から欧州を助けることになるでしょう。このように、欧州には、潜在的な回復を促進するいくつかの要因があると考えます。

さらに先を見据えると、地理的優位にある米国であり、その中でも投資の観点から、デジタル化、自動化、クリーンテクノロジーといった世界的な長期構造トレンドは健在であり、さらに、これまで遅れていると見られていた脱炭素化分野では、今や世界のリーダーとして浮上しつつあります。

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