
【新興国小型株戦略】「先進国化」する新興国、「新興国化」する先進国
新興国小型株へのいざない(2025年10月)
「先進国化」する新興国、「新興国化」する先進国-
安定的かつ成長性に富む新興国に投資機会、特に小型株に注目
■変わりつつある構図

かつてグローバル経済は、「安定的な先進国」と「成長ポテンシャルはあるものの不安定な新興国」という明確な区別で理解されていました。先進国は堅実な財政基盤、安定した金融システム、そして確立された民主主義に支えられ、安定成長で安全な投資先と見なされていました。一方、新興国は高成長の潜在性はあるものの、財政規律の欠如、急激な通貨変動、そして政府の不安定性により、固有のリスクを抱える投機的な市場と見なされていました。しかし近年、この構図は変わりつつあります。新興国は財政規律を強化し、政治的にも安定的な体制になりつつあり、経済成長も比較的高い上に安定的になっています。一方、先進国は高水準の債務、政治的分断と混乱という、以前新興国が抱えていたような問題に直面しています。いわば、新興国が以前の先進国のようになり、先進国が以前の新興国の様相を呈しています。
そして、こういった構造的な追い風に加えて、新興国には人口動態、技術の普及と内需拡大という恩恵が揃っていて、株式市場、特に小型株式市場が注目されています。
■「先進国化」する新興国:ファンダメンタルズは強靱に
新興国は過去の経験から多くを学び、財政の健全化、外貨準備の充実に務め、その上で人口動態の活用、 AI(人工知能)等デジタル技術の利用を通じて経済基盤を着実に強化しています。新興国は経済の強靱化により、従来の「不安定」というレッテルを覆し、新たな「安定成長の担い手」としての地位を確立しつつあります。
●政府の財政目標を導入し、持続可能な財政を維持へ

多くの新興国は、財政の持続可能性を確保するため、財政赤字や債務水準に法的な政府目標を設ける取り組みを進めてきました。インドの2003年財政責任・予算管理法やインドネシアの2003年国家財政法はその代表例です。フィリピンも財政規律を法律や制度で強化しています。新型コロナウイルスのパンデミックでは、こうした新興国も大規模な財政出動を余儀なくされましたが、財政的な枠組みにより持続可能な財政を維持しつつあります。
最新(2025年10月)の国際通貨基金(IMF)の財政規律に関するレポート1によれば、2000年以降、財政規律を導入する新興国が急速に拡大しています(図表を参照)。1990年代は先進国で財政規律の導入が進みましたが、2000年以降は新興国での導入増が目立っています。特に2020年以降、先進国で財政規律を新たに導入したのは1カ国なのに対し、約10カ国の新興国が新たに財政規律を導入しています。
●外貨準備の充実、自国通貨建て債務拡大で金融市場の安定性向上
また多くの新興国は過去の通貨危機を教訓に、外貨準備を積み上げてきました。そして、為替および金利変動リスクが高い外貨建て債務を抑制し、自国通貨建て債務を増やしています。これらが、資本流出への圧力や急激な為替変動に対する強固な防護壁として機能し、新興国の金融市場の安定性を大きく向上させています。
新興国の金融市場の成熟度も高まっています。新興国債券の信用格付けは全般的に向上しており、MSCI新興国社債指数を構成する米ドル建て社債の平均格付けは2025年当初には、過去約20年間で最高になっています2。そして新興国の債券市場は広がりと厚みを見せています。JPモルガン・チェースは2026年上期に、新興国債券市場の充実に伴い、同社が公表している主な新興国債券指数で主要な発行国の組入比比率を引き下げる方針です。それによって、中国やインド等の主要新興国から、より小規模な新興国への幅広い資金流入を促すことが見込まれます。
- https://www.imf.org/en/Publications/WP/Issues/2025/10/03/Fiscal-Rules-and-Fiscal-Councils-Recent-Trends-and-Revisions-since-the-Pandemic-570622
- https://www.msci.com/research-and-insights/blog-post/emerging-markets-in-a-world-beyond-us-exceptionalism
■「新興国化」する先進国:様々な基盤が動揺
新興国が経済基盤を強化しつつある中、先進国では過去の安定成長を支えていた基盤が揺らいでいます。財政赤字の拡大、政治的不安定性の高まり、そして構造的な成長鈍化により、先進国は従来の「安定」から一転して不透明な状況になりつつあります。
●拡大する財政赤字とそれに伴う金融リスク
先進国では、世界金融危機への対応やパンデミックでの景気対策を経て、政府の債務水準が歴史的な高水準に達しています。IMFは、先進国の公的債務が2025年には国内総生産(GDP)比110.1%に達すると予測しています(中国を除く新興国は58.4%)3。大規模な財政赤字に加え、実質長期金利が上昇しており、先進国の財務の持続可能性への難題となっています。

先進国では財政支出の拡大が続いています。人口の高齢化で社会保障支出の増加が止まらず、また米国の孤立主義傾向やロシアの積極的な軍事攻勢に伴い、国防費の増加が各国の財政に重くのしかかっています。米国とフランスでは構造的赤字の拡大に政治的対立が拍車をかけており、英国や日本では、医療費・社会保障費の増大が加速しています。
●政治的・社会的リスクの顕在化
多くの先進国では賃金の上昇が物価高に追いついておらず、経済格差に対する国民の不満は、ポピュリズムや保護主義的な政策を掲げる政党への支持を拡大させています。これにより、政治的に不安的な状況を生み出しています。2024年の議会選挙では、多くの先進国で政権与党が議席を減らし、政権交代が起こりました。米大統領選挙や欧州連合(EU)議会選挙では、保護主義を打ち出す陣営が台頭し、国際社会の分断が深まる様相を見せています。特に米国では第2次トランプ政権が誕生し、国内の混乱や分断が拡大し、国際的にも大きな不安定要因になっています。
- https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2025/04/23/fiscal-monitor-April-2025#Overview
■安定的な新興国の明るい展望と注目される小型株
安定的になってきた新興国の経済成長を支える構造的要因は、有望な人口動態です。多くの新興国は生産年齢人口の割合が高まる「人口ボーナス期」を迎えており、経済活動拡大への強力な原動力となります。例えば、インドは2040年ごろまで人口ボーナス期が続くと予想されており、豊富な労働力供給と巨大な国内市場が経済成長を後押しします。
また、新興国では増大する若い世代がデジタル・IT技術をいち早く受け入れているため、デジタル経済への移行が急速に進んでいます。加えて、新興国のベンチャー企業等は、欧米の主要テック企業と連携してAI等の最新技術を導入しています。こういったITやAIを中心としたデジタル経済の拡大は、内需を主導する国内企業の成長を促しています。
新興国小型株の多くは、消費やインフラ関連など地域に根差した内需企業が中心であり、新興国の経済成長の恩恵を直接的に享受する傾向があります。グローバルなサプライチェーンや世界経済の動向に左右されやすい新興国の大企業とは異なります。
なお、新興国小型株式市場はその銘柄の多くが割安な水準で取引されていますが、これは情報の非効率性から生じるものであり、市場で見過ごされている魅力的な企業が多く存在していることを示唆しています。ただ、新興国小型株式市場の銘柄数は膨大でアナリストがカバーしきれるものではありません。このため一方で、AIなどでビッグデータを活用しシステム分析することで、市場が気づいていない企業の価値を見いだすことが可能になるとみています。
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