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Investment Institute
年次見通し

米国株式市場 - 人工知能:バブルではない… 少なくとも現時点では


人工知能(AI)は、インターネットの登場以来、最も大きな影響をもたらすデジタル・トランスフォーメーションのテーマです。2022年11月のChatGPTの一般公開が投資とイノベーションの波を一気に加速させましたが、その勢いは現在も衰えを見せていません。この新しい技術に対する期待が高まり、将来の可能性に大きな注目が集まる中、投資家や業界関係者の間では「AIはバブルに突入しているのか」という疑問も生じています。現時点での当社グループの結論は、少なくとも「今のところは」AI市場はまだバブルではない、というものです。一方で、リスクや、インターネットおよび通信業界のバブル期(いわゆる「ドットコム時代」)との類似点については、慎重にモニタリングを続けています。


リスクと類似点:

  • 主要なAIモデルをいち早く市場に投入しようとする競争が激化しており、いわば「軍拡競争」の様相を呈している。その結果、インフラが過剰に構築される可能性があり、すべての企業が成功できるわけではないという点が懸念される。
  • AIモデルの学習や運用には巨額の先行投資が必要となる一方で、収益化や利益への寄与は将来に先送りされる傾向がある。そのため、多くのAI関連プロジェクトにおいて、投下資本利益率(ROIC)がどの程度確保できるのか不確実性が残る点が課題となっている。
  • プライベート・クレジットの活用や、ジョイントベンチャーや特別目的会社といったオフバランス構造を用いたデット・ファイナンスが登場しており、さらに一部では、急速に減価する資産であるGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を担保として用いるケースも報告されている。こうした動きは、相応のリスクを伴う可能性が高いと考えられる。
  • サプライヤーと顧客の間に相互依存的な取引構造が存在することは警戒すべき要因である。当社グループは、こうした相互に絡み合った財務的依存関係がもたらし得るシステミックリスクについて懸念している。

ポジティブな側面として、現時点ではバブル局面には至っていないと当社グループが考える背景にはいくつかのバブルを抑制する要因も存在

主なクラウドサービスプロバイダー(CSP)は、強固なバランスシートと安定したフリーキャッシュフロー創出力を備えた大規模かつ効率的な企業である。これまでのところ、AI関連の設備投資は主として営業キャッシュフローによって自己資金で賄われている。これに対し、1990年代後半のインターネット・通信バブル期には、インフラ投資を負担した企業の多くが多額の借入に依存しており、景気循環を乗り越えるための安定したキャッシュ創出事業を有していなかった。
 
図表1: MSCIワールド情報技術(IT)指数のバリュエーション水準はドットコムバブル時の水準には程遠い状況

データは2025年9月30日現在。出所:MSCI、ブルームバーグ

AIの導入はまだ初期段階にあり、見込みのある活用事例が拡大を続けている。最近の調査によれば、企業の78%が少なくとも1つの部門でAIを利用している一方で、5つ以上の部門で導入している企業は16%にとどまっている1。•また、AIエージェント(Agentic AI)は、AIを搭載した自律エージェントがITシステムやデータを横断して推論・計画・実行することを可能にし、多くの業務プロセスを自動化できる新たな活用事例を生み出す可能性を秘めている。さらに、AIがロボティクスや各種コンシューマーデバイスと融合することで、フィジカルAI(Physical AI)の時代も視野に入ってきている。テクノロジーの普及サイクルにおいては、広範な収益化が実現する前に大規模な投資が先行することは珍しいことではない。

現在は、AIベースのアプリケーションをエンドユーザーに即時提供できるインフラ(高速インターネット、スマートフォン、その他の接続デバイス)がすでに整っている。これは、インターネットおよび通信バブル期には存在していなかった環境である。当時は、光ファイバー網の整備が、実際にブロードバンド接続を提供する「ラストワンマイル」ネットワークや、スマートフォンの普及よりもはるかに先行していた。この違いにより、イノベーターが収益化に至るまでの時間を大幅に短縮できる点が今日のAI市場の大きな特徴である。たとえば、ChatGPTは2025年10月時点で、サービス開始から3年未満で週次アクティブユーザー8億人に到達している。これは、インターネットの普及に13年かかったことと比較すると、圧倒的なスピードと言える。
 

図表2:テクノロジーセクターの新規株式公開(IPO)の年別株価売上高倍率中央値

データは2025年9月29日現在。出所:新規株式公開:最新統計数値、ジェイ・R. リタ―、フロリダ大学、「Table 4a」

上場テクノロジー企業株式のバリュエーションは、1990年代後半の水準と比べれば過熱感ははるかに小さい状況である。現在も当時と同様に期待は高いものの、多くのAIリーダー企業のバリュエーションは依然として妥当な水準にある。典型的なバブル局面では、バリュエーションが実態から乖離し、投資家が過度に楽観的な予想に基づいて高いマルチプル(倍率)を支払うようになる。当社グループの見立てでは、現在のAI分野において投機的なバリュエーションが最も集中しているのはプライベート市場であり、多くのAI企業が長期にわたり非上場のまま成長することで、上場株式市場がその過熱感から守られている側面がある。
  • https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai

現在の市場では、高い期待が寄せられているものの、バリュエーション倍率は妥当な範囲に収まっているとみています。10年前と比較して倍率が高くなっているのは、成長企業の利益率の向上や自己資本利益率(ROE)の改善を反映した結果といえると考えています。

インターネット/通信バブル期には、高い期待に対して極めて高いマルチプルが付与されていました。たとえば、1999年にはテクノロジーセクターのIPOにおける中央値の株価売上高倍率(P/Sレシオ)が43倍に急騰し、2000年にはさらに上昇して49.5倍に達していました。

総括すると、AI関連テーマは現時点ではバブルの領域には達していないと当社グループは考えています。AIを牽引する企業に対する期待は非常に大きいものの、バリュエーションは依然として妥当な範囲にあります。もっとも、今後に向けて複数のリスク要因が存在することも認識しており、支出サイクルにおける消耗期が訪れる兆候についても注意深く見守っています。また、この「軍拡競争」のような競争から勝者が現れるにつれ、業界の再編やディスラプションが徐々に進行する可能性もあります。引き続き、企業レベルにおけるボトムアップのファンダメンタル分析に注力し、競争優位の企業を見極め、逆にリスクの高い企業を避けることに努める必要があると考えています。そして、AIの普及が進展するなかで生じる様々な動向を、今後も継続的かつ緻密にモニタリングしてまいります。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

本資料は、当社と同じBNPパリバグループであるBNPパリバ・アセットマネジメント株式会社より提供されたものを加工し掲載しております。

(オリジナル記事は11月19日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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