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インフレのピーク:投資家はインフレの時代をどのように進むべきか

  • 2022年7月18日 (7 分で読めます)

市場では米国のインフレがピークに達したと考えられていた矢先の6月に、再び予期せぬ上昇がありました。価格がより長期間にわたり高水準を続けると見込まれており、投資家は潜在的に変動が大きいと予想されるこれからの道をどのように進んでいけるでしょうか?

6月に発表された米国の5月のインフレ率(消費者物価指数、CPI)は、予想に反して前年同月比で8.6%に再度上昇しました。3月に8.5%に達したインフレ率が4月に8.3%に減速したため、ピークが過ぎたという期待を裏切る形になりました。5月の数値は、米国では1981年以来の最高値であり、さらに価格上昇は広範囲に渡っていました。 (訳注:7月に発表された6月のCPIは9.1%となり、上昇が続いています。)

ウクライナ戦争はエネルギー価格・食品価格の高騰を引き起こしましたが、米国で最新のインフレ数値には、住宅費、中古車、航空運賃、その他の著しい上昇価格までが含まれます。1

そしてこれは米国だけではありません。ユーロ圏のインフレ率は6月に最高値の8.6%に急騰し、また英国では5月に9.1%に上昇しましたが、これは物価上昇率として40年間での最高記録となりました。2 逼迫した労働市場により、比較的広範なインフレ圧力がさらに強まる恐れがあります。従業員がインフレへの対応策として昇給を求める米国ではすでに賃金の上昇が見られる一方、この動きがユーロ圏でも見られ始めています。3

歴史的に低インフレが続いた日本でさえ、2カ月連続で日銀の2%目標を上回る年間コア消費者物価指数を報告しています。4

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賃金の上昇率

ピークはまだこれから

米国のインフレ率はまだピークに達していないと当社では見ており、2022年後半にはようやく減速を始める可能性があるとしても、今後18カ月間は高水準を保つと予想しています。ユーロ圏および英国においても、ピークはまだこれからであると考えます。

ユーロ圏のインフレ率は現在のところ、9月か10月に9.5%に達し、その後は穏やかながらも減速し始めると予想され、慢性的なインフレのリスクがあります。これはロシアがウクライナに侵攻する以前の予想とはかけ離れており、当時はユーロ圏のインフレ率は2022年4~6月期にピークの4.5%に達すると見られていました。ユーロ圏のインフレに関するリスクバランスは、ロシア産天然ガスに対する欧州の依存度および、コモディティ価格の上昇局面におけるユーロ安は輸入価格の上昇を意味することを考慮すると、依然として上昇傾向にあります。

下の図は2022年9月のインフレを織り込んだ市場価格形成をベーシスポイントで示したもので、年初からの上昇が5%を超えることが分かります:

2022年9月までの年間インフレ率を織り込んだ市場価格形成
出所:Bloomberg、2022年6月24日付

世界中の中央銀行がインフレ抑制の意図で利上げを始めており、その先頭をきったのが米連邦準備制度理事会(FRB)で、5月に行ったフェデラルファンド金利(FFR)の50ベーシスポイント(bp)引き上げに続き、6月には75bpの引き上げを行いました。現在 FFR は年内に3%を突破すると予想されており(FRB による金利見通しの中央値予想、別名「ドットプロット(点図)」)、3カ月前に予想されていた1.9%をはるかに上回っています。5

中央銀行は、インフレと経済の双方を鎮静化させる機能をもつ利上げと、スタグフレーションあるいは景気後退さえ招きかねないリスクとの間の、時として微妙な一線で舵取りを行っていることから、7~9月期は正念場となると当社は考えます。

インフレ期待の長期化から長期インフレ連動債への転換

短期的には、特にインフレがまだピークに達していない市場では、ブレークイーブンインフレ率、つまり国債の名目利回りとインフレ連動債の実質利回りの格差に拡大の可能性が見られます。

しかし、スタグフレーションのリスクが上昇し、インフレが加速を止めた後でも歴史的に高水準を維持する状況では、短期のインフレ連動債が長期のブレークイーブンインフレ率よりも高いリターンを上げると当社は考えます。  短期のインフレ連動債は食品やエネルギー価格を含むインフレ数値全体に連動しており、当社ではこれらが高水準を保つと見ていますが、デュレーションが限定されていることで、高い変動性に対処するのに役立つと考えられます。

インフレ連動債は原則的にインフレに連動しているため、短期のインフレ連動債を保有することは、金利の上昇に対するバッファーとして機能する可能性もあります。中央銀行が金融政策の引き締めを続けている状況では、金利は上昇すると考えられるからです。

この市場にすでに参入していなかった投資家は、「インフレトレード」を見逃したかと自問するかも知れません。上述のように、短期的には当社が見るブレークイーブン・インフレ率の潜在性は限られており、短期デュレーションのインフレ連動債の方がより魅力的な検討対象である可能性があります。

長期的には、インフレが結果として予想よりも長期化するリスクが高まっている一方で、市場が価格に織り込んでいるインフレは今なお過渡的なものです(下記の図参照)。

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インフレ予想:下降しつつも、歴史的に高水準を維持へ

ボラティリティが高い道のり、しかしポジティブな見通し

最も可能性の高い下方リスクは、コモディティ価格の下落からと当社は見ています。しかし、ウクライナ戦争が継続しやがて冬に近づき始めるにつれて、エネルギー価格は高水準を保つと予想される一方、新型コロナウイルス関連のロックダウン後の復興と現行のサプライチェーンの行き詰まりを理由に他のコモディティへの需要が上昇するため、これらも高価格を維持する可能性があります。

比較的長期のインフレ連動債も、実質利回りの上昇およびインフレとの堅固な連動により、歴史的に高水準のインカムを上げ続けるかもしれません。ただ、利回りの上昇余地は、短期デュレーション・インフレ連動債と比べるとわずかなものになりそうです。これは、長期のインフレ連動債は、金利感応度がはるかに高く、このためリスクも高くなることからです。それでも、今年に入って実質利回りが著しく上昇していることから、長期投資家にとって、より魅力的となる可能性があります。長期のインフレ連動債にとっては、経済成長の低迷と高いインフレ率の持続が並存する、いわゆる「スタグフレーション」シナリオも有利にはたらくと考えられます。

年初からそうであったように、投資家は短期的にある程度のボラティリティがあることを念頭に置くべきでしょう。インフレが歴史的観点から非常に高水準を保つと考えられる一方、2022年7月初旬に公表された欧州および米国の購買担当者景気指数が示唆するように、経済成長はすでに減速しつつあり、景気後退の懸念が高まっていることから、中央銀行はますます窮地に立たされることになるでしょう。しかし、実質利回りが利上げと歩調を合わせてプラスの領域に戻るにつれて、インフレ連動債の見通しが潜在的に魅力的であり続けると私は見ています。

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