
今年下半期に向けて
- 2025年6月27日 (3 分で読めます)
2025年前半の世界の主要な金融市場ではリターンが堅調でした。消費者と企業の回復力と相まって、投資家の楽観的な見通しが、貿易戦争と実際の戦争の両方の問題を上回った模様です。リスク資産を売る動きが出てもすぐに反転していました。インプライド・ボラティリティ(予想変動率)の指標でさえ低下しています。市場の予想では、米国で利下げが複数回行われる見通しが強まっています。トランプ大統領などの発言は現実よりひどいかもしれず、投資家は混乱した記者会見を見ても、実際には何も起こらないという見方もできます。しかし、本当にそうでしょうか?これまで以上に、厳しい経済指標が7月以降の今年後半の市場の方向性を決定づけると見ています。成長が鈍化し、インフレが上昇しても驚かないでください。
鈍化
世界経済の成長は減速しています。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し*による過去のGDPデータと予測によると、世界経済大国18か国のうち、2025年の成長率が過去45年間の年間平均を上回るのはインドとスペインのみです。GDPの成長率を長期的なトレンドと比較した場合、世界経済は2024年に長期トレンドを下回り、今年はさらにその傾向が強まることを示唆しています。これは直ちに景気後退(リセッション)に陥ることを示唆するものではないものの、景気後退リスクは高まっていることを示唆していると見ています。歴史的に、全米経済研究所(NBER)は、米国経済成長が急速に減速し、過去の平均を下回った時期を米国の景気後退期と定めてきました。経済状況は今(執筆当時)、まさにそうした転換点の一つにある可能性があり、これは明らかに資産配分や債券市場における投資家のポジション形成に影響を与えると見ています。成長鈍化は金融緩和サイクルを長期化させると予想され、また、追加利下げの余地は欧州よりも米国と英国のほうが広いと見ています。
*IMF世界経済見通し2025年4月版
長く繰り返す関税問題
しかし、市場は景気後退を織り込んでおらず、市場にみられる多くの分析が、世界経済は回復力があり、米国のある程度の関税の導入には耐えられることを示唆しています。しかし、最終的な関税水準がどうなるかは分かりません。今週(執筆時)私(筆者)が読んだある投資銀行の調査によると、7月9日には10%の基本関税が課される可能性が最も高く、米国は他国との合意を目指し、合意に至らない場合は追加関税も辞さない「交渉姿勢」を維持すると示唆されています。週末のセンチメント(市場心理)は、米中間の貿易協定が進展しているという認識を反映しているように見えました。実のところ、どれも少し退屈です。なぜ自由貿易だけではないのでしょうか?(関税政策では)ほとんどはっきりとした利益がないのに、大きな経済的損失が発生する可能性がもたらされたことはこれまでにありませんでした。
保留中
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが近づいているという楽観的な見方も市場には広がっているようです。市場では7月30日の利下げの可能性が高まっており、年末までに3回の利下げが行われる可能性も十分にあります。しかし、この点については確信が持てません。トランプ大統領からFRBへ利下げ圧力が絶えずかかっていることを考えると、そのような動きを正当化するには、実際の経済データに基づく確かな証拠が必要です。今は平時ではないとすれば、成長率の低下予測に基づく利下げは正当化されるかもしれませんが、その場合、FRBは信頼性をリスクにさらすことになるでしょう。トランプ大統領は既にパウエルFRB議長の後任として4人の候補者を挙げていることを示唆しており、事態は手遅れかもしれません。しかし、現時点では金利の変動は穏やかで、債券市場は「安全資産」としての役割を担っています。
経済成長が鈍化しても、テクノロジーセクターは上昇
データはどうでしょうか?米商務省が6月26日に発表した米国の2025年1~3月期国内総生産(GDP)の確報値は前期比年率換算で0.5%の縮小を示しました。2024年10~12月期の好調な成長の後、輸入の前倒しと消費者支出の軟化が影響していることを考えると、この数字を過度に解釈すべきではないと考えます。しかし、GDPの構成要素のほとんどで成長が鈍化している傾向があり、前年同期比では経済成長率は2.0%で、一年前の昨年1~3月期の2.9%から低下しました。貿易をめぐる不安定さ、企業および消費者支出の減少、そして関税が消費者所得と企業利益率に及ぼす実質的な影響を考えると、今年1~3月期は興味深い期となるでしょう。成長の鈍化は経済が景気後退に陥るリスクを高めます。問題は、このリスクがテクノロジー株の上昇に再び支えられている株式市場の楽観的な見方を覆すのに十分なほどにまで高まるか否かです。多くの企業が人工知能(AI)への投資を増やすにつれて、エヌビディアの株価はこれまでのように最高値を更新し続ける可能性があると見ています。
初期の兆し
全米供給管理協会(ISM)の月次調査は、常に市場から注視されています。6月2日に発表されたISM製造業景気指数では、輸入指数が低下し、支払価格指数は高水準にあります。これは輸入品への課税から予想される通りです。また、米労働省が26日発表した失業保険申請件数も増加傾向にあり、6月21日までの週の4週間平均は24万5000件で、今年3月29日までの4週平均22万3000件から増加しました。劇的な変化ではありませんが、米国の経済成長率が低下していることを示唆するには十分と見ています。しかし、FRBにとっては、少なくとも今のところは十分ではないでしょう。
クレジットは堅調に推移
景気減速はあるものの景気後退局面には至っていない状況は、債券市場全般への投資にとっては概ね好ましい状況です。市場はFRBが利下げするとの見方をしていると思われます。再びユーロ高が進む欧州においても、欧州中央銀行(ECB)はインフレ率が低すぎると判断し、最終的にはスイス国立銀行の政策に倣ってゼロ金利政策を採らざるを得なくなる可能性があると見ています。しかし、そこまで極端な動きがなくても、金利環境は企業にとって好ましい環境であり、また、債券ポートフォリオのインカムを最大化したい投資家にとって好ましい状況になると見ています。今週、債券ポートフォリオ・マネージャーらと協議した結果、社債などクレジットへの需要は依然として非常に堅調であり、企業の信用問題やハイイールド債市場における債務不履行(デフォルト)は依然として稀であるとの見通しが示されました。クレジットスプレッド(信用格差による利回り差)は縮小していますが、利回りは相対的に良好な水準です(米国投資適格債市場平均で約5%、ハイイールド債市場平均で7%以上)。
市場への投資は成果をあげられるか?
貿易戦争と米国がイランへの軍事行動に直接介入したことを考慮すると、今年上半期の市場リターンは、考えられるよりも良好になっています。一部の株式市場のリターンは目覚ましいものがあります。ブルームバーグによると、韓国総合株価指数のトータルリターン(現地通貨、年初来6月26日まで)は約30%に達しています。債券市場のリターンは株式市場ほどではないものの、年初来の利回り水準とほぼ同じ水準にあります。米国ハイイールド債市場は年初来6月26日までに4.3%のトータルリターンを達成し、そのトータルリターン指数**は過去最高を更新し続けています。今年の年間リターンは7%から8%に達する可能性があると見ています。
**:ICE BofA 米ハイイールド債指数
今年後半のスタート地点では、市場の価格は上昇しており、リスクは継続しています。もし利益確定か、より高いリターンの追求かという選択を迫られたら、私自身はどちらを選ぶか分かっているつもりです。ワシントンの政権が突然、より予測可能で正統派になるわけでも、地政学的リスクが消え去るわけでもありません。しかし、VIX指数は16、ICE BofA 米国社債1~5年指数は利回り4.5%と、どちらも割安であると見ています。
パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年6月26日現在。
企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。
(オリジナル記事は6月27日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
本資料で使用している指数について
ICE BoA 米社債1-5年指数、及び、ICE BoA 米ハイイールド債指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国の投資適格社債のうち残存年数が1年から5年までの社債、及び米国のハイイールド社債についてそれぞれの値動きを示す指数です。
韓国総合株価指数:韓国証券取引時メインボードの全上場銘柄(普通株)からなる時価総額加重平均指数です。
VIX指数:シカゴオプション取引所がS&P500種指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表している指数です。
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