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Investment Institute
年間見通し

投資見通し:リターンへの期待は慎重ながらもポジティブ

  • 2022年12月1日 (7 分で読めます)

主なポイント

  • 金利のピークが債券をサポート
  • キャピタルゲインは難しく
  • 債券のインカムリターンは改善
  • 株式には景気後退のリスク
  • 業績予想はさらに下方修正される可能性が高い
  • セクターローテーションの余地
  • エネルギー価格に大きく左右される

対照的なリターン

2022年は投資資金の退避場所がほとんどありませんでした。インフレ、金融引き締め策、地政学的リスクは、2020年と2021年にリターンを生み出した要因と全く対照的でした。こうした背景から、最終的に債券と株式資産の再評価を余儀なくされました。低インフレから高インフレへ、低金利から高金利へと、市場が新たなパラダイムに適応するなかでリターンは損なわれました。

しかし、2022年が終わりに近づくなか、市場はより安定した足場を見いだしています。10~12月期のリターンは、現在もそうですが見通しが不透明だったにもかかわらず、それ以前の水準を大きく上回りました。インフレ率は高く、緩和の兆しを見せているだけにすぎません。中央銀行は新年に入っても利上げを停止することはないでしょう。さらに重要なのは、米国と欧州で景気後退が予想されることです。

2022年末にかけての資産価格の緩やかな回復は、近年のバリュエーションのピークに再び到達する方向への一歩と見なすべきではないと考えます。株価収益率は高水準を下回り続ける可能性が高く、債券利回りはゼロ近辺に戻ることはないでしょう。量的緩和時代に投資家が享受したようなキャピタルリターンが近く再来することはないとみられます。現在の環境下では、バリュエーションやクレジットリスクにかかわらず、単に業績の成長や高い利回りを追求するだけではない、より慎重な投資戦略が求められます。

インフレのメリット

景気後退下では、企業資産から投資家へのキャッシュフローが困難になります。コストが上昇し、売上高が圧迫されると、収益の成長は鈍化します。クレジット市場では、キャッシュフローが乏しい場合、借り手が負債をどのように管理するかを理解することが重要になります。2023年初頭は、マクロ経済の不確実性がまだ比較的高いため、投資家はある程度ディフェンシブな姿勢を維持すると思われます。ボラティリティが高まり、損失が継続する可能性を排除すべきではないでしょう。

トレードオフの改善

しかしながら、債券投資家はインフレと政策金利のピークから最も恩恵を受ける立場にあります。債券市場にとってリターンとリスクのトレードオフは改善しています。近年に比べて利回りが高いため、債券保有者にはより多くのキャリー(期間収益)が、新たな債券投資にはより良いインカム機会がもたらされます。同時に、利回りの上昇に伴い、債券はマルチアセット・ポートフォリオにおいてより重要な役割を果たす可能性があります。2022年は極めて異例なことに、債券と株式のリターンがいずれもかなりマイナスになりました。ただ幸いなことに、中央銀行は毎年300~500bpsずつ利上げするわけではありません。従って、2023年に同じことが起きるとは思いません。株式が成長環境に苦しんでいる場合、債券はヘッジ手段となり、インカムを重視する投資家にとって代替策になり得ます。

デュレーションのサポート

2022年は金利の上昇が幅を利かせ、そのバリュエーションへの影響は明らかでした。成長が鈍化した場合、中央銀行はインフレが落ち着いている限り、利上げを停止するでしょう。このことはすでにイールドカーブに織り込まれており、市場は米国の金利が4~6月期に、ユーロ圏の金利が7~9月期にピークを迎えると予想しています。今のところ、この環境が、債券市場の短期ゾーンのエクスポージャーを支えています。このような戦略は現在、ここ数年で最も高い利回りを提供しています。カーブに沿ってデュレーションを長期化すれば、より良い利回りも確定でき、市場が中央銀行の緩和を予想し始めた時点でキャピタルゲインを実現できるオプションももたらされます。当社の基本シナリオ予測では、2023年後半ないし2024年まで緩和の可能性は低いですが、市場はこうしたイベントを期待する傾向があります。

インカム対トータルリターン

債券市場と関連戦略の新たな状況は、よりバランスの取れたものになっています。近年、中央銀行が利回りを押し下げたため、リターンはキャピタルゲインで占められていました。現在は、インカムがトータルリターンに占める割合がより大きくなってきています(Exhibit 1参照)。これにより、債券に重きを置くポートフォリオ構築は、インカム重視の戦略に適するようになり、さらに機関投資家は、利回り目標達成において不必要なクレジットリスクや流動性リスクを負うことなく、より柔軟に負債と資産を合致できるようになります。

こうしたインカム重視と、キャピタルゲインの低めの可能性が、社債市場を支えています。しかし、借り手は困難に直面するとみられ、これがクレジットスプレッドの水準に影響する可能性があります。金利は企業の借り入れコストの上昇に大きく影響しています。スプレッドも拡大していますが、過去のストレス期に見られた高水準はまだ下回っています。つまり信用格付けが同程度の場合、現在の利回りはここ数年に比べて大幅に高いということです。企業はバランスシートを総じてうまく管理し、負債を返済し、レバレッジを抑え、健全な金利カバー率を確保しているため、これは魅力的なリターンの可能性をもたらします。中期的に見ると、現在のスプレッドであれば、企業のファンダメンタルズが改善した場合に、投資家はキャピタルゲインの恩恵を受けることができるでしょう。

Exhibit 1: 債券のリターンはインカムがメインに
Source: Bloomberg LPP - ICE BofA Bond Indices and AXA IM Research, 17 November 2022

ハイイールド債の時代到来?

コアクレジット投資戦略は、より低いクレジットリスクでより高い利回りを達成できます。従って、ディフェンシブなクレジットセクターが魅力的な利回りを提供するのであれば、投資家は景気敏感セクターのリターンを追い求める必要はありません。なお、ハイイールド債にも一定の役割があります。2022年の利回りは、歴史的に見ると、その後プラスのリターンにつながる水準にあります。ハイイールド債市場は全般的に、過去に比べて信用力が向上しており、信用指標は投資適格債市場と同様の改善を見せています。もちろん、デフォルトは多少増加するでしょうが、借り換え関連のデフォルトが多発する懸念はほとんどありません。ハイイールド債の(国債に対する)超過リターンと株式リターンには密接な関係があることから、ハイイールド債は、株式リターンがいずれ回復する場面で相対的にリスクの低い選択肢になると考えています。

インカムの追求

近年よりも少ないデュレーションリスクとクレジットリスクで高い利回りの達成が可能です。特に、これは現在のような経済環境において有効です。新興国債券のように、債券市場構造においてより厳しい部分でリスク調整後のパフォーマンスが大幅に改善するには、全体的な見通しとリスク心理が大幅に改善するまで待たねばならないかもしれません。ウクライナ戦争の終結と中国の不動産市場の回復は、新興国債券にとって歓迎すべき展開となるでしょう。

10~12月期の株式市場の上昇は、インフレ率と金利のピークへの期待が主な材料でしたが、業績見通しが悪化していることや、金利が近年を上回るという環境に照らして判断する必要があります。これらはしばらくの間、株式にとって逆風であり続けるでしょう。すでに見られる大幅なバリュエーション引き下げ後も、株式市場は予想される収益不況の影響を依然として受けやすい状態にあります。

バランスの取れた見通し

今後、セクターやスタイルのローテーションが進む可能性があります。エネルギー関連株は、原油・ガス価格の高騰を背景に市場平均を上回るパフォーマンスとなっています。しかし、歴史的に見ると、エネルギーセクターは収益が循環的であるうえ、市場のバリュエーション引き下げに最も影響を受けてきた活力のある新たな経済セクターに比べると、長期的な成長の可能性は低くなっています。

伝統的なエネルギー企業の長期的な見通しは、エネルギー移行への機運という課題を抱えています。確かに、価格が高止まりする可能性はありますが、景気の影響でエネルギー需要が損なわれたり、供給面で新たな展開(ウクライナ戦争の終結やイランの国際石油市場への復帰)があったりした場合、その保証はありません。同時に、企業の新しい投資サイクルが最終的にテクノロジーや自動化に恩恵をもたらす一方、政府の政策はエネルギー効率とヘルスケアにより重点を置くようになるでしょう。

株式リターンが数年連続でマイナスとなるのは前例がない話ではありません。しかし、収益に圧力がかかっているものの、バリュエーションは魅力的であり、見通しはバランスが取れていると当社は考えています。米国以外の市場では、株価収益率が大幅に低下しています。例えば欧州市場は、ウクライナでポジティブな進展があれば上昇する可能性が十分にあります。アジアは中国の「ゼロコロナ政策」後の回復から恩恵を受けるでしょう。それでも、長期的には、米国の技術的優位性、より高度なエネルギー安全保障、より良好な人口動態を考慮すると、米国のバリュエーション・プレミアムが低下する可能性は低いでしょう。ただし、短期的に見ると、米国市場の値がさ株の一角は依然として脆弱な状態にあります。

世界的な金融引き締めにより、資産クラス全体の再評価を余儀なくされました。キャッシュフローは期待しづらくなっており、2023年を迎えるにあたって、投資家は資本成長戦略にあまり自信を持てなくなるでしょう。債券のリターンはボラティリティの割に改善するとみられ、株式市場の一部は割安になりつつあります。2023年が進むにつれ、マクロ見通しはより明確になるはずです。このことが、慎重ながらもポジティブなポートフォリオリターンへの期待を支えるとみられます。

 

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