暗闇に放たれた警告の衝撃(ジャクソンホールにおけるパウエル発言)
キーポイント:
- 不確実性とボラティリティが広がるかもしれないが、「ジャクソンホール2022の精神」(パウエルFRB議長が先週行った講演)は極めて明確である。インフレが持続するようであれば、市場はリスクを取るべきではなく、FRBによるさらなる引き締めが必要となってくる。それでも、2023年は別の話になるかもしれない。
先週開催されたジャクソンホール経済シンポジウムでの議論の多くが、中央銀行が現在直面している極めて大きな不確実性に焦点を当てており、その一方、金融引き締め「継続」に関する政策的結論は極めて明確でした。これは、中央銀行のリスクのとらえ方が大きく変化したことを反映しています。インフレが持続する可能性が高いため、たとえマクロ環境がかなり不安定になったとしても、(インフレ抑制に向けて)力強く行動せざるを得ないと中央銀行は考えています。これは、デフレリスクで断固たる緩和策が求められた「大規模な緩和」期とは対照的なアプローチです。
しかし、少なくとも米国では、データフローはますます曖昧になってきています。7月の消費者物価指数の好材料(6月から低下)に加えて、輸入価格も低下しています。 しかし、FRBは依然として労働市場に注目し続けており、賃金上昇が続いていることから、パウエル議長のタカ派的トーンは正当化されます。今回のジャクソンホールにおいて、1970年代および1980年代に関する議論が目立っていたのは、FRBの政策の誤りを懸念していることを示唆しています。また、米国政府へのメッセージもあるのでしょう。結局のところ、現在のコアインフレ・ショックの多くは2020年から2021年にかけての過剰な財政刺激策でかなり説明できるため、中央銀行は消費者物価の加速に対処できなかったと非難されることにうんざりしているのかもしれません。1970年代のFRBの「原罪」は、当時浪費傾向にあった政府の圧力に抵抗できなかったことにあります。今後、労働市場が決定的に悪化し始めれば、「ジャクソンホール2022の精神」の賞味期限はそれほど長くはないかもしれません。しかし、政策スタンスには常に慣性があり、急には変更されません。データフローが悪化してもFRBは年内利上げを継続するでしょう。8月の休み前に私が指摘していたように、市場は焦ってFRBのハト派的旋回を織り込みすぎていたのでしょう。
ジャクソンホールでのECB関係者の発言もタカ派的でした。しかし、私は、(ECBタカ派の)シュナーベル理事とフランス銀行(中銀)のビルロワドガロー総裁の分析にかなりの違いを見出しています。それでも、これは2023年以前にはあまり重要ではないかもしれません。今のところ、ECBのタカ派とハト派は、政策金利を中立領域に戻す必要性で一致しています。
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