クリーンテック戦略月次レター:環境関連コンサル企業が堅調
クリーンテック戦略月次レター(2022年9月の振り返り)
環境関連コンサル企業が堅調
エネルギー移行やサステナビリティ向上に配慮したインフラ整備、交通システム、建設プロジェクトで強い需要
9月のグローバル株式市場は、各国で引き続き大幅な利上げが実施され、中央銀行高官からタカ派的発言が続いたことから主要国でより深刻な景気後退に陥る懸念が高まり、大幅な下落となりました。地域、セクターを問わず全般的に下落しましたが、ヘルスケアや生活必需品などのディフェンシブセクターは比較的小幅な下落にとどまりました。グロース株、バリュー株はともに下落しましたが、グロース株の下落幅の方が大きくなりました。
クリーンテック戦略ポートフォリオの2022年9月のパフォーマンスは、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)をやや下回りました。当月は、主として米国や欧州の保有銘柄の株価下落がマイナス寄与となりました。「スマートエネルギー」および「低炭素輸送」関連分野の保有銘柄は軟調でしたが、ディフェンシブな色合いが強い「持続可能な食糧供給」関連分野の保有銘柄は比較的好調でした。
環境に配慮したエンジニアリング企業に強い需要
持続可能な食糧供給関連分野では、エンジニアリングおよびコンサルティング企業のアルカディスがプラス寄与となり、注目されています。オランダ・アムステルダムを本拠とする同社は、環境に配慮したインフラ整備、交通システム、建設プロジェクトなどに従事しており、エネルギー移行やサステナビリティの向上を目指す企業からの強い需要があります。同社は、欧州・中東、米州、アジア太平洋で幅広く事業を展開しています。このほど着手された、欧州最大のインフラプロジェクトである英国の高速鉄道線「HS2」の先駆的な低炭素型高架橋の建設では、同社が設計部門を率いています。同社はまた、トロントに拠点を置き、グリーンビルディングやインフラ設備効率化などに注力する設計会社IBIグループの買収を完了し、株価はそれを好感し上昇しました。
EU、ドイツは天然ガス高抑制へ総合対策
なお、ロシアからの天然ガス供給減に猛暑の影響が加わり天然ガス価格高騰が続いています。欧州では液化天然ガスの購入と夏場の経済活動鈍化によって天然ガス貯蔵率は改善しましたが、冬場の暖房需要には不十分とみられます。こうした状況を受け、欧州連合(EU)は9月末、節電の義務化、電力会社の収益への上限設定、石油・天然ガス企業の過大な利益の一部への徴収で合意しました。緊急時限措置として12月から実施し、暖房需要が拡大する冬を前に、エネルギー価格高騰に苦しむ家計や企業を支えるため市場介入を行います。一方、ドイツ政府は、最大2,000億ユーロ(約28兆円)におよぶ天然ガス価格抑制のための総合対策を発表しました。企業や家計の負担を和らげるために、天然ガス料金に上限を設けます。報道によれば、同国政府はまた、ロシア産天然ガス供給の想定以上の減少により負債が拡大していた独エネルギー大手企業ユニパーに約80億ユーロを出資し、国有化に踏み切る意向です。
ガスパイプライン損傷などで欧州のエネルギー自立問題はさらに重要に
こうしたマクロ経済上の懸念にも関わらず、エネルギー移行に向けた推進力は引き続き高まっています。ウクライナ紛争によって浮かび上がったエネルギー自立問題は、世界各国、特に欧州にとって最重要課題となっています。9月下旬には、ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」で何らかの破壊工作により損傷が生じ、欧州向けの天然ガス供給の停止が長引く可能性が高まっています。また、ロシア国営天然ガス企業ガスプロムは、10月上旬に一時的にイタリア向けのガス供給を停止ました。欧州各国は洋上風力発電などの再生可能エネルギーの供給能力拡大を急いでおり、短期的には、発電時に二酸化炭素を排出しない原子力発電稼働の延長などの対策を講じています。
ポートフォリオの動向
スマートエネルギー関連分野では、ハノン・アームストロングが金利上昇により再生可能エネルギー、エネルギー効率化、持続可能なインフラストラクチャー建設プロジェクトなどのための資金調達コストが上昇し利益を圧迫するとの懸念から下落し、マイナス寄与となりました。再生エネルギー開発には追い風が吹いており、蓄電、水素・バイオ燃料などニッチな分野についても米インフレ抑制法が成長の支えとなると思われることから、同社については引き続きポジティブに見ています。証券化ビジネスおよび助言サービスからの報酬も収益の分散に貢献しています。
低炭素輸送関連分野では、電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)などの大手部品サプライヤーのアプティブがマイナス寄与となりました。同社は投入コストの上昇、サプライチェーン問題、顧客企業の生産スケジュールの不透明感などを背景に、通期の業績ガイダンスを下方修正したことから投資家のセンチメントを冷やしました。しかしながら、EVの更なる普及、自動車で採用される電化部品の増加などから恩恵を受ける企業として同社は優位にあり、新規受注も好調であることから業界平均を上回る成長を遂げるとみています。
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