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米国ハイイールド債市場アップデート - 2022年11月


キーポイント 

  • 米国ハイイールド債市場は秩序ある動きを続けている

  • 限定的な発行状況が依然として強い追い風になっている

  • 小売および消費財関連企業のハイイールド債価格が落ち着き始めたが、他のセクターが景気減速の兆しを見せている

あらゆる資産クラスでボラティリティ(変動性)が依然として大きなテーマになっていますが、米国ハイイールド債市場は秩序ある動きを続けています。 ハイイールド債の取引数量は全体的に少ないため、価格が下落した場合、買いが入ります。ハイイールド債の大規模な投げ売りは見たことがありません。 英国年金基金のドローダウンのハイイールド債市場への影響はごく僅かでした。 

10月28日に24億ドル(約3,300億円)以上がハイイールド債 ETF に流入し、記録史上最高水準となりました。  ハイイールド債 ETF への最近の資金流入(10月14日以降77億ドル以上)は、ライジングスター(ハイイールド債から投資適格債に格上げされた債券)、クーポン、入札、満期といった要素を包含するハイイールド債に対して、実質的な短期的テクニカルサポートを提供しています。  アクティブ運用会社は、ハイイールド債市場の様々なセグメントへのエクスポージャーを機動的に軽減するため、とりわけテクニカルな強みを利用しています。

米国ハイイールド債投資家は、米社債ユニバースの内外で想定外のレバレッジポイントを注意深く見ています。この良い例として、最近の日本円の動向および、その後に日銀が円の安定のために行った介入があります。過去には、こういった場合には債券の強制的な償還がありましたが、日銀は現時点では、そのような懸念は和らげているようです。

クオリティの高いクレジットやポジティブモメンタムのある発行体に対して、プライマリー市場(発行市場)は引き続き開かれています。  既存の資本構成でデュレーションが長期化し、クーポンレートが低下しているため、大半の発行体は忍耐強く待つ能力があります。  発行が限定されている状況は、ハイイールド債にとって引き続き強い追い風になっています。

米国ハイイールド債市場では、スプレッドの圧縮が引き続き話題になっています。一方で、分散が拡大しており、最も質が低いディストレストクレジットに対しては、通常のハイイールド債ポートフォリオの買い手の減少が続いています。 

決算発表シーズンに入っており、市場予想をわずかにでも下回れば厳しい売りに直面し、市場予想と同じかそれを上回った場合には、市場の反応は精彩を欠いています。米医療サービス会社のテネット・ヘルスケアは、当月初旬にそういった例となりました。決算発表後に債券価格が3~5パーセントポイント下落し、数日前に市場の好調な推移に伴いようやく回復しています。

セクター別概観

多数のハイイールド債発行体、特に上場株式を発行していない企業は、決算発表シーズンにおける決算報告が他社より遅くなります。 このため当社のセクター別概観は通常、多数の企業が決算報告を行った時点で作成されます。しかし、早期に決算発表を行った企業およびハイイールド債市場外に存在する大型発行体から得られた2~3のポイントは注目に値します。

  • 基礎原料および中間製品の化学企業の決算は景気減速の兆しを見せていますが、これは落ち込みと言うより、むしろピークからサイクル中間の水準への移行と言えます。発行体の一部は前年同期比での利益低下を報告し、利益低迷の原因を需要の減少およびエネルギーや原材料のコスト上昇としています。前年同期比での利益率の低下は前年の好業績との比較であり、決算数値は全般的に、過去18カ月間に見られた異例の利益率から、通常の水準に戻ったことを示しています。

  • 小売および消費財の企業にとってようやく運送費が低下を始め、物品価格が落ち着き始めたところですが、7~9月期および10~12月期の収益は引き続きインフレ圧力と物品価格上昇を示す可能性が高く、これが消費者をさらに厳しい状況に追いやると考えられます。当社は今後もこれらセクターのハイイールド債発行体を緊密にモニターし、消費者需要の健全性およびセクターの在庫水準に関する兆候を見極めていきます。在庫に関しては、マイケルズおよびパーティ・シティによる最近のガイダンスが、ホリデーシーズンにかけての在庫管理がどれほど異なるかを浮き彫りにしています。マイケルズが在庫不足を発表した同日に、パーティ・シティは必要以上の在庫レベルにあることを発表しました。

  • 決算発表シーズンにおけるこれまで最大のニュースは、メタ・プラットフォームズ(フェイスブックの親会社)およびアルファベット(グーグルの親会社)などの巨大テクノロジー企業からのものです。両社の決算はコンセンサス予想を下回り、株価下落を引き起こしたことが報道されました。メタとアルファベットはそれぞれ広告事業へのエクスポージャーを持ち、メタは前年同期比4%の売上高減に対し、アルファベットは YouTube 広告セグメントで前年同期比2%の売上高減少を報告しています。ハイイールド債市場では広告にエクスポージャーをもつ発行体への余波は限定的な模様で、特にテレビ放送局などは、大型テック企業と比べて地域の堅実な広告市場への依存度が高くなっています。さらに地域のテレビ放送局は、7~9月期と10~12月期の両期で、論争の源となっている米中間選挙関連の政治広告により、収益が増強されるでしょう。

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