クリーンテック戦略月次レター:欧州エネルギー戦略、転換へ
クリーンテック戦略月次レター(2022年4月の振り返り)
欧州エネルギー戦略、転換へ
ロシアへのエネルギー依存度を低下させる必要性の高まりにより、再生可能エネルギー関連やEV分野で投資加速へ
4月の世界株式市場は、金利先高観や消費減速に対する懸念を背景に大幅な下落となりました。ウクライナ紛争や中国の大都市におけるロックダウン(外出制限)が原料コスト高やサプライチェーン問題に与える影響も投資家の不安材料となりました。クリーンテック戦略ポートフォリオの当月のパフォーマンスは、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)を下回りました。為替市場で米ドルに対して円安が進行したことがプラス寄与となったものの、主として北米や欧州の保有銘柄の株価下落がマイナス寄与となり基準価額は下落しました。
EU、ロシア産原油の輸入を段階的に停止へ
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化により、ロシアへのエネルギー依存度を低下させるため、欧州のエネルギー自立戦略が動き出しました。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は5月初め、ロシア産原油の輸入を6カ月以内に段階的に停止し、石油関連製品の輸入も年末までに停止する計画を発表しました。今後、天然ガスについても制裁対象に加えることを検討する見通しです。
EUは3月に、ウクライナ侵攻を受け、エネルギーに関するロシアからの独立を実現し、同時に脱炭素化のペースを加速するという計画(REPowerEU)を発表していました。EUは天然ガスの約45%をロシアから輸入しており、フォンデアライエン委員長は、「EUは、明らかにEUに対して威嚇を行う供給国に頼ることはできません」と3月に言及していました。これに対し、ロシア国営エネルギー会社であるガスプロムは4月下旬、ポーランドとブルガリアがルーブルでの支払い要請を拒否したため、両国への天然ガス供給を停止しました。同委員長は「(ガスプロムの動きは)脅迫である」と非難しました。
差し迫ったエネルギー自立問題を解決するため、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)などの分野に多額の投資が行われようとしています。新たなエネルギーインフラとして、スマートグリッド、国境をまたがるエネルギー供給網の拡大、再生可能エネルギー発電能力の増強、エネルギー効率化、エネルギー貯蔵などが必要とされます。輸送システムは、化石燃料から電気自動車(EV)、バイオ燃料、グリーン水素などのソリューションの組み合わせへのシフトを迫られています。実際、スマートエネルギー企業は早くもエネルギー効率化、住宅用および商業用再生可能エネルギー発電・蓄電設備などへの需要が高まっていることを報告しています。
EV志向を強める自動車メーカーと消費者
また、サプライチェーンの制約が続く中、自動車メーカーはEVの製造を優先し、また消費者も燃料費高騰を受けてEVへ乗り換える動きが見られることから、新車販売におけるEVのシェアは上昇を続けています。2021年には、世界のEV販売台数が初めてハイブリッド車を上回ったとみられます。特に中国での新車販売が急速に拡大しています。
独メルセデス・ベンツグループは、EV専業への移行を進めており、特に高価格車種へのシフトを加速させています。今年後半には、旗艦ブランドである「Sクラス」のEVシリーズ主力モデルのSUVを発売する予定です。同グループは今後、超高級車種「マイバッハ」のEV投入も予定しています。
なお、長引く中国におけるロックダウンは同国での生産活動に大きな影響を及ぼしており、世界的なサプライチェーンの混乱に拍車をかけています。現在のところ、中国は経済的・人的コストを犠牲にしてゼロコロナ政策に固執しています。この政策が持続可能かどうかは不透明であるため、運用チームでは、低炭素輸送分野などの産業への影響やインフレ圧力の緩和につながる可能性について状況を注視しています。
ポートフォリオの動向
スマートエネルギー関連分野では、前月にプラス寄与となった銘柄の多くが、良好な業績見通しにもかかわらず株価が下落しマイナス寄与となりました。これには、市場における成長株から割安株へのローテーションが大きく影響しました。中でも、これまで堅調に推移していたエネルギー効率化ソリューション企業のアメレスコが最も大きくマイナス寄与となりました。
廃棄物処理・資源有効利用分野では、米国のリパブリック・サービシズやカナダのウェイスト・コネクションズなどのリサイクル企業がプラス寄与となりました。経済再開に伴い事業関連のごみ回収・リサイクル量が増えたこと、インフレ連動型の契約を有していることなどがプラスに働きました。
『証券アナリストジャーナル』に当戦略ポートフォリオ・マネージャーの論文掲載
当戦略のポートフォリオ・マネージャー、アマンダ・オトゥールの論文「世界で広がるインパクト投資の新潮流」が『証券アナリストジャーナル』誌の2022年5月号に掲載されました。同誌「インパクト投資」特集の一つとして、アクサIMのインパクト投資のアプローチや投資分析の枠組みなどを紹介しています。論文につきましては、日本証券アナリスト協会のホームページをご覧ください。
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