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新型コロナ感染第2波に見舞われる欧州経済
- ロックダウン長期化によるW型の景気シナリオ:新型コロナウイルスの感染第2波に直面する欧州各国は、再度のロックダウン(都市封鎖)や活動制限の強化に追い込まれた。ドイツやフランスなど主要国は4週間程度のロックダウンを表明しているものの、すでに導入から2週間以上が経過した現在でもなお、日々の新規感染者数は前回ロックダウン時のピークを遥かに上回っており、政府の想定よりも活動制限が長引く可能性が極めて高い。経済活動への悪影響を抑制する観点から、前回と比べて制限は緩やかなものに留まっているものの、ロックダウンが長引けば経済的損失が膨らんでいく恐れがある。その結果、これまで想定されていた欧州経済の“緩やかな回復”シナリオは下方修正を避けられず、W型の景気パスを描く可能性が高まっている。
- 実体経済の悪化に対応する財政・金融政策の拡大:実体経済の悪化に対処すべく、各国政府は財政支援を拡大するともに、欧州中央銀行(ECB)は金融支援の強化に乗り出すだろう。しかしながら、現時点における各国の追加財政支援の規模は限定的な規模に留まるほか、今後の経済回復のけん引役として期待される7,500億ユーロの欧州復興基金についても、法の支配の履行を巡るハンガリーやポーランドの反発から、最終承認を経て予定通りに予算が執行されるかについて未だ不透明感が残っている。財政政策に不確実性が残るなか、経済の下支え役としての重要性が増しつつあるECBは、12月10日に予定される理事会において、資産買入プログラムの拡大や延長、条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の拡充などにより、政府の財政支出や企業の資金繰り支援を強化していくとみられる。
- 経済再悪化と政策強化を踏まえた欧州債投資戦略: 欧州経済の再悪化リスクが高まりつつあるなかで、不確実性の高い財政支援と一段と緩和的な金融政策のバランスは、これまでの低金利・低スプレッド環境にも変化を生じる可能性があり、それらを踏まえた欧州債の投資戦略が、今後のリターンの安定確保にとって重要性を増すと当社は考えている。欧州各国の国債利回りについては、資産買入プログラムの拡大を中心とするECBのサポートにより、低水準での安定推移が続く可能性が高い。もっとも、イタリアやスペインなど政権基盤に脆弱さを抱える国では、経済制限の長期化に伴う雇用や所得の悪化が、政府に対する国民の不満を高めるとともに、政治の不安定化が国債利回りに上昇圧力を加えるリスクには注意を要する。クレジットについては、金融機関の与信態度の厳格化に伴って、企業の資金繰りに問題を生じる恐れが高まりつつあるため、信用力に劣る低格付け債を中心に、やや慎重なスタンスで臨むことが適切であろう。また社債の年限構成については、実体経済の悪化に起因するスプレッド拡大局面では、残存年数の長い社債のスプレッドが相対的に拡大する傾向があるため、投資対象年限を短期債へシフトする事により、スプレッド拡大時のリスク抑制効果が期待できよう。
ご留意事項
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