マクロ経済見通し:予想外の底堅さ
2025年の世界経済は予想外に底堅く推移しました。「解放の日」(訳注:トランプ米大統領が関税政策を発表した4月2日を指す)直後には、IMFは2025年の世界経済の成長率を2.8%と予想していましたが、最新の予想では3.2%に引き上げられています。1。
一般に市場が現在の景気サイクルの景況判断に用いる経済活動指標である購買担当者景気指数(PMI)は、初夏に経済活動の回復が始まったことを示しています。この回復は、関税を回避するために企業が生産や貿易を前倒ししようとしたことで一時的に活動が活発化したとされる以上に長く持続しています。2026年に向けて、市場は4月初頭と比べてはるかに楽観的な成長見通しを持っています。
2026年には、ユーロ圏経済は加速するとみています。貿易政策をめぐる不透明感の高まりに伴う成長への逆風は、今後和らぐ見通しです。春先には企業は設備投資を抑制していたようですが、貿易協定に関する先行きが明確になった今、投資は回復するとみています。同時に、財政政策による新たな追い風を受けて、成長率が押し上げられる見通しです。
ドイツの財政スタンスにおける構造的変化は、今年の欧州のマクロ経済ニュースの中で最も重要な出来事でしょう。インフラと防衛への支出増加が来年の経済活動の活発化につながり、その結果、ドイツ経済が押し上げられ、その他のユーロ圏もある程度押し上げられる見込みです。今回の財政見直しには、外食費への付加価値税の恒久的な引き下げや光熱費の補助金など、消費支出に直接的な影響を及ぼす可能性のある措置も含まれています。
しかし、物価に関しては、今後数年間でさらに物価上昇が軟化する可能性がありますが、世界的な貿易摩擦の高まりが大きな役割を果たす可能性があるとみています。安価な中国製の輸出品が欧州市場に再び流入すれば、新たな物価上昇抑制の効果が生じる可能性がありますが、このことは市場ではほとんど無視されてきたのではないかと考えます。当社グループの予想では、インフレ率は2027年に目標を下回り、それを見越して欧州中央銀行は2026年末までにさらに数回の追加利下げを実施するとみています。現在、市場ではそこまでの利下げを織り込んでいません。
| “FRBは今後数年間にわたり、現在の市場予想よりもやや多めの利下げを行うとみています。” |
- {https://www.imf.org/en/blogs/articles/2025/10/14/global-economic-outlook-shows-modest-change-amid-policy-shifts-and-complex-forces;IMF – Global Economic Outlook Shows Modest Change Amid Policy Shifts and Complex Forces(政策が変わり複雑な要因が働く中、世界経済見通しは若干の変化)}
米国のマクロ経済見通しを支配するのは、ドナルド・トランプ大統領の政策議題です。その政策議題の各要素がもたらす数量的な影響の大きさについては議論の余地がありますが、進む方向は明らかだと当社グループは考えています。関税引き上げや財政スタンスの緩和、移民政策の厳格化は、経済活動への影響はそれほど明確ではないとしても、いずれも経済のインフレ圧力が高まる要因になりそうです。米連邦準備制度理事会(FRB)は現在、物価上昇は一時的(かつては一過性のインフレと呼ばれていた)としていますが、インフレ率は今後数年間、持続的に目標を上回る可能性が高いと当社グループは考えています。
さらに重要な点として、FRBの対応の仕方が変わりつつあると考えられます。今後、FRBは労働市場の結果を重視するようになり、それに応じてインフレ指標が重視されなくなると予想しています。こうした変化に伴い、歴史的に見ればすでに緩和的になっている金融環境でも、FRBは今後数年間にわたり、現在の市場予想よりもやや多めの利下げを行うとみています。
中国について当社グループの予想では、中国経済の成長速度は今後数年間にわたり減速し、追加的な景気刺激策の恩恵を受けたとしても、成長率は2027年末までに年4%を割り込むと見ています。中国当局による大規模な景気対策は期待していないものの、債券発行枠の前倒し、政策金利の追加利下げ(2025年第4四半期から2026年第2四半期まで四半期ごとに10ベーシスポイント)、戦略的セクターに的を絞った追加支援策の実施が見込まれます。
中国は、習近平国家主席が掲げる「2020年から2035年に国民1人当たりのGDPを倍増させる」という目標の達成に必要な成長ペースを維持する上で、純輸出と不動産投資には頼れないのが実情です。その不足分を消費が補うという大半の中国経済分析にみられる見解は、当社グループの考えとは異なります。そうではなく、中国政府は「新質生産力」と呼ぶ先進的な製造業とテクノロジーを重点とする投資重視の成長戦略に引き続き頼っていくと当社グループは考えています。
結論として、2026年の見通しは地域によって異なります。欧州経済は、嵐を乗り切った後、勢いを取り戻したように見えます。米国は、FRBが新体制の下で経済的な対立や政治的困難をどのように切り抜けていくのか、全く不透明な状況にあります。そして中国では、中期的な成長見通しと、投資主導の成長からの転換度合いが引き続き焦点となるとみています。
| “欧州経済は、勢いを取り戻したように見えます。米国は、全く不透明な状況にあります。そして中国では、中期的な成長見通しが焦点となるとみています” |
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(オリジナル記事は11月19日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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