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Investment Institute
マーケット見通し

一呼吸


わかっていること

米国トランプ大統領は、大規模な経済および金融市場の危機を引き起こすことを恐れていると思われます。同大統領は株式市場と債券市場の価格下落を受けて、関税に関する極端な立場から後退し、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を解任するとの発言も控えました。また、市場は、同大統領が予測不可能であり、政策決定が一貫性を欠いていると見ています。同氏が極端な立場に戻る可能性は常にありますし、もしそうなれば、市場では再び売りが強まると見ています。関税が米国と世界経済に損害を与えることはわかっており、その証拠が増えてきています。現時点では、市場のボラティリティはセンチメント(消費者および企業の信頼感の悪化)や需給要因(国債市場でのレバレッジ解消の動き)によって引き起こされています。やがて、マクロ経済環境とバリュエーションが本当に重要になってくると考えます。マクロ環境は悪化しており、米国市場のバリュエーションは相対的に安くはないと見ています。「米国売り」という動きは先週緩和されたかもしれませんが、トランプショックはまだ終わっていないと見ています。


状況を見極める

トランプが再び大統領に返り咲いて以来不確実性が表面化してきましたが、市場参加者は、今回のような不確実性に対処しなければならなかったことはこれまでになかったと思います。このかつてないほどの不確実性によって、市場にボラティリティ(変動)が生じ、投資家は「米国例外主義(他の先進国とは質的に異なっているという信条)」に疑問を抱くようになり、成長見通しは下方修正され、インフレ見通しは上方修正される動きが見られます。この不確実性は、投資家や企業の活動を麻痺させ、たびたび内容が変わるワシントンからのメッセージによって長く続いています。したがって、投資戦略を導くための一貫した信頼できる説明を作成するのは難しいことと見ています。しかし、自分たちがどこにいるのかを見極めようとすることは常に価値があると考えます。

交渉しても、関税は上昇すると見ている

大局的にみると、4月2日に発表された相互関税は実施を先延ばししましたが、今後米国は、いわゆる解放の日の前よりも大幅に高い関税体制になる可能性が高いと見ています。このことが成長やインフレにとって悪影響を及ぼす理由については改めて説明する必要はないでしょう。市場での予測の多くは、米国や世界の成長見通しを下方修正しており、4月22日発表の国際通貨基金(IMF)経済見通しもその一つです。アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ(アクサIM)がしばらくの間主張してきましたが、リセッション(景気後退)のリスクが高まっていると見ています。リセッション期には通常、企業の利益率が低下します(今回の企業決算シーズンからの示唆によれば、企業は利益率の中で関税コストの一部を吸収しているようです)し、純利益も打撃を受けると考えます。経済の見通しがより明確(かつ良好)になるまでは、米国の株式市場が以前の高値に戻ることや、米国のクレジットスプレッド(発行体の信用格差による利回り差)が今年の1月と2月に見られたタイトな(縮小した)水準に戻ることは難しいと考えます。米国資本市場がマイナスのリターンとなる可能性は、依然として相対的に大きく残っていると見ています。

後退

アクサIMは、今後高い水準の関税が適用されるだろうと考えています。これは成長とインフレに影響を与えると見ています。しかし市場は、トランプ大統領は市場が同氏に不利に動くときには、より極端な立場から後退することも知っています。相互関税実施の90日間延期は、株式市場が相対的に大きく下落した後に発表されました。また、トランプ大統領はソーシャルメディアでパウエル議長を攻撃し、金利引き下げを求めたにもかかわらず、その後同大統領は同議長を解任するつもりはないと発言しなおしました。これは債券市場の動揺も要因となったと見ています。トランプ氏の周りには、大統領よりも賢明な助言者がいるのかもしれません。大統領自身も、米国の金融資産やドルの大規模な売却によってもたらされる潜在的な経済や金融市場へのダメージを理解できるかもしれません。現時点(執筆時)では、極端なテールリスク(起こらないと思われていた想定外の暴騰・暴落が実際に発生するリスク)となるような政策や市場の反応は起こりにくいと見ています。短期的に迅速に売買する投資家にとっての一つの教訓は、ホワイトハウスが姿勢を後退したときに、市場の短期的な反発に備えて、売りが強まった時に買い向かうことです。しかし、「迅速」と「短期的」という言葉はここで強調されるべきかと思います。市場を取り巻く環境は、S&P 500が2023年と2024年に20%超のトータルリターンを生み出したときよりも悪化していると見ています。トランプ大統領が政治的にすべて(関税、政府効率化、FRBへの攻撃)を後退させるのは難しいと思われます。これらから後退することは、同氏の「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」 計画 を否定し、今年の中間選挙を前に同氏を政治的に傷つけることになる可能性があると見ています。

義務を果たす

現在のところ、FRB議長の地位は安全と思われます。パウエル氏が良い議長であったかどうかについては賛否がありますが、市場は金融政策への政治的干渉には強く反対しています。FRBは完璧ではないかもしれませんが、投資家はFRBを理解し、FRBの反応能力を把握しており、リスクに対する価格はFRBのそうした機能に基づいていると考えています。FRBに干渉することは、金利やインフレ期待を不安定にするリスクがあり、これは適切ではないと見ています。現在、FRBは二重の義務目標の間近にあると見ています。現在の失業率はNAIRU(インフレを加速させない最低の失業率)のすぐ下にあり、これはインフレが上昇する前に持続可能な最低の失業率と考えています。そして、個人消費支出(PCE)コアインフレは2.0%をわずかに上回っています。通常の環境にあれば、FRBはインフレ率がさらに低下するまで、現在のやや引締め気味の姿勢を維持すると見ています。今後を見据え、歴史的にみて失業率が目標から乖離した場合にFF金利(米国の政策金利)が大きく変化してきたことを考慮すると、成長が鈍化し失業率が上昇すると、FRBは利下げに向かうと考えています。債券市場にとっては、この場合、イールドカーブ(利回り曲線)がスティープ化(急勾配化)する傾向を続け、曲線全体で良好なリターンをもたらすと見ています。


国債は非常に重要と見ている

ボラティリティが高まっているにもかかわらず、米国債の利回りの推移は昨年の範囲内に留まっています。ICE BofA米国債指数のトータルリターンは、年初来で約3%です。世界の他の国々が米国債を手放すという動きは見られていません。債券利回りが上昇し、ドルが下落することは稀なことだと、様々な記事に書かれていますが、2つのうち、ドルの下落の方がより明確に表れています。主要通貨は全て弱いドルの恩恵を受けており、これは債権国への資本の再移転を示唆していると見ています。最終的な関税水準が米国のリセッションリスクを高めるのに十分なほど大きくなった場合には、現状では企業や消費者の信頼感が低下し、米国の株式やクレジットが依然として割安ではないと思われる水準にあるため、ドルにはさらに下押しされる可能性があると見ています。また、米30年国債の利回りは3年以上にわたり上昇傾向にあり、米国債イールドカーブの長期部分はスワップレート(短期変動金利と固定金利を交換する契約の固定金利水準)に対して引き続き割安になっています。つまり、米国債にはさまざまな政策や経済の不確実性を反映したリスクプレミアムが付随していると見ています。

解放の日(4月2日、トランプ大統領が名付けた、同政権の野心的な関税政策を発表した日)の翌週、米国債市場のボラティリティの上昇は、この市場が世界的にリスクの価格を設定する上でどれほど重要であるか、またあらゆる種類のヘッジ、資金調達、レバレッジ投資の場を提供する上でどれほど重要であるかを思い出させました。ボラティリティが上昇すると、担保の棄損が発生する場合があります。これまでのところ、大きな棄損はほとんど現れていないと思われます。しかし、トランプ氏がドルやFRB、予算に対して予期せぬ行動を突然行う場合、他の債券市場が混乱し波及して、影響が大きくなる可能性があると見ています。現時点では、政策ショックが沈静化することを前提とすれば、米国債市場の長期デュレーション部分は、成長が鈍化しているという証左が増えていることを反映してくると考えています。投資戦略として、これをインフレ連動債市場の短期部分と組み合わせることで、関税によるスタグフレーション(景気の後退と物価の上昇が同時進行する経済状況)の影響についてインフレ加速とリセッションの両面を捉えることができると見ています。

非効率的な株式市場

株式市場について、市場コンセンサスではS&P 500の1株あたり利益が2025年では265ドルになるとしています。これにより、指数の株価収益率は20を超えます。これは他市場や過去の水準と比較して高い水準になっています。ただし、市場では予測を下方修正する動きがあり、この修正によって米国の株式市場が現在の価格水準を維持することが難しくなる可能性があると見ています。企業のこれまでの業績発表には、関税による不確実性がどのようにサプライチェーン、受注、資本支出に影響を与えているかについての言及が多く含まれています。

しかし、過去の例を見ると、市場の株価水準が10%調整されると、その後の1年間のリターンはプラスになる傾向があることを示しています。米国第一主義政策による最悪のシナリオが回避されれば、2000年代初頭や世界金融危機後に見られたような、株式市場の下落相場に展開していくことはないかもしれません。気を付けるポイントとして、株式指数の水準に相対的に大きな調整がありましたが、しかし米国株はまだ割安の水準ではなく、経済見通しは悪化していると見ています。「Buy America(アメリカを買え)」という取引に戻るのは時期尚早と思われます。トランプ政策の長期的な影響と、リスクプレミアム上昇の必要性は、まだ市場の株価水準に反映されていないと考えています。

ハイイールド債券市場は投資に良好な水準にあると思われる

クレジットスプレッドは足元でも縮小しており、投資適格債券市場およびハイイールド債券市場から得られる国債市場を上回る超過リターンは、関税の延期発表以降、ほぼすべてプラスとなっています。執筆時時点で国債指数に対するハイイールド債券指数(ICE BofA米国ハイイールド指数)のスプレッドは400ベーシスポイント(bp)をわずかに下回り、指数の利回りは約7.8%です。デフォルトリスクは上昇していますが、これはハイイールド市場への投資家にとってはプラスの材料のように見えます。歴史的に見て、スプレッドが400bpから450bpの間にある場合、2000年以降の平均で見ると、ハイイールド市場はほとんどの保有期間において国債市場を相対的に小幅ながらプラスの超過リターンを提供しています。トータルリターンの観点から見ると、利回りが8.0%から8.5%にある場合、年率リターンは平均して約11%になっていました。ハイイールド債券市場がわずかながら調整する場合には、今後期待される今後のリターンを引き上げることになると見ています。

株式市場ではさらに下落する可能性があるように、クレジットスプレッドもさらに拡大する可能性があると見ています。S&P 500がさらに10%調整するとすれば、ハイイールド債券指数のスプレッドは現在の水準から最大で100bp〜150bp広がると見ています。国債に対するスプレッドが500bp〜550bpの場合、国債に対する過去の平均的な超過リターンは年率で約5%となっており、9.0%以上の利回りはハイイールド債券戦略への投資家にとって良好な投資開始の水準になる可能性があると見ています。ただし、ハイイールド債券市場はクレジット問題のリスクが相対的に高いため、ハイイールド債券市場に投資する場合には分散と柔軟性を持つ戦略を通じて行うのが重要であると考えます。

ただの混乱ではない

解放の日から3週間が経ち、ほとんどの金融資産の価格チャートは、抑制された混乱であったように見えます。S&P 500は4月8日の安値から10%上昇し、米10年国債利回りは4月11日の高値から20bp低下し、クレジットスプレッドは投資適格債券市場で15bp、ハイイールド債券市場で88bp狭くなっています(4月24日時点)。したがって、理論的には市場の下落幅は当初考えられていたほど大きくはなく、その原因は主に、トランプ大統領が市場崩壊のリスクに直面して、姿勢を後退させたためです。しかし、被害は過小評価されるべきではないと考えます。最近の出来事は、市場が米国の政策決定を嘲笑するようなものであり、不確実性が継続する場合には、特に米国の資産に投資している外国投資家にとってリスクプレミアムの上昇が必要になると見ています。何よりも、企業は、こうした様々な状況が需要や利益の見通しに与える影響について心から懸念を表明しています。トランプショックはまだ終わっていないと見ています。マクロ、バリュエーション、センチメント、需給要因が米国資産に対してすべて赤信号を点灯させる可能性は依然として重大なままと見ています。

パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ICEデータサービス、ブルームバーグ、アクサIMグループ。特に記載がない限り、2025年4月24日現在。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。また、記載内容は、特定の金融商品への勧誘や推奨を意図したものではありません。

(オリジナル記事は4月25日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

本資料で使用している指数について

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ICE BofA米国債指数 及び ICE BoA米国ハイイールド指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国債及び米国ハイイールド債券の値動きを示す指数です。

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