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米国がハイテク革新の世界的中心地としての地位を固める

主なポイント
米国のテクノロジー分野は、人工知能(AI)の進歩も手伝って、引き続き市場予想を上回る業績を上げています
クラウドコンピューティング、電子設計、サイバーセキュリティなど、その他の分野でも革新的なハイテク企業が数多く存在します
世界的なデジタルトランスフォーメーションが進行中であることから、米国のハイテク分野は今後も大きな投資機会の可能性を提供し続けると考えられます

米国のテクノロジー分野の活力は、2023年の好業績が2024年にもしっかりと繋がっていることから、衰える気配が見られません。昨年、ナスダック指数は45%1 のトータルリターンを達成し、2024年にはハイテク分野の盛り上がりに後押しされ、ハイテク株比率の高いこの指数が2024年に入って最高値を更新し、S&P500種株価指数も最高値を更新しました。2

これらの比較的大きなリターンは、業界の優れた成長率、収益の強さ、そして生成AIの可能性への期待を示しているものと見ています。

アップル、アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラのいわゆる「マグニフィセント・セブン」は、AI開発競争に力を注いでおり、昨年それぞれの株価が市場以上に上昇をしたことで注目を集めました。2023年、S&P500種指数は26%のトータルリターンを達成し、その大半をこの7社が占めました。3

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好業績、比較的高いバリュエーション

米国のテクノロジー株のバリュエーションは、この分野の株価上昇によって上昇しました。S&P500情報技術(IT)セクターの株価収益率(P/E)(企業の株価と1株当たり利益の相対的な関係を示す指標)は、5年前の19.4倍に対し27.7倍となっています。4

しかし、バリュエーションは近年の水準やS&P500平均と比べると割高ではあるものの、AIの発展とAI分野が業績予想を上回る能力によって、より高い業績の成長が期待されていることを反映しています。

この分野の最新の決算報告では、この成長力が引き続き強調されています。グーグルの親会社であるアルファベットは、今年1〜3月期の売上高が予想を15%上回る805億ドルになったと報告し、初の配当支払いを発表しました。5

その他、マイクロソフトは、サティア・ナデラ(Satya Nadella)最高経営責任者(CEO)が「AI変革の新時代」を歓迎する中、2024年上半期3カ月間の総売上が17%増の619億ドルと予想を上回りました。6

クラウドコンピューティングにより、アマゾン7 の1〜3月期の収益は予想を上回り、フェイスブックを所有するメタも1〜3月期の収益が27%増加し、予想を上回りました。8

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未来の原動力

アマゾンのAlexaやアップルのSiriなど、AIは以前から私たちの身近で使われていましたが、画像、テキスト、動画、その他無数の種類のコンテンツを生成・作成できる生成型のAI登場は、画期的なゲームチェンジャーとして注目されています。

歴史が示すところでは、技術の進歩が生産性を向上させ、特定の分野における労働力の必要性を減らすと同時に、農業から製造業への転換など、しばしば新しい分野で雇用を創出してきました。

生成AIの影響は、これまでの大規模な技術革新に匹敵するほど広範囲に及ぶ可能性があります。つまり、この影響は、生産性と経済成長を押し上げる可能性を秘めており、また、社会的にも経済的にも重大な変化の可能性を予測させるものです。

コンサルティング会社のMcKinsey & Companyの試算によると、生成AIは、現在の労働者の時間の大半を占めている労働活動をさらに自動化する技術でもあるため、世界経済に年間最大4.4兆ドルの経済的価値をもたらす可能性があると見込まれています。9 投資の観点からは、こうしたことが起こる可能性はかなり高いと見ています。

FactSetによると、興味深いことに、S&P500指数の採用企業の内179社が2023年第4四半期の決算会議で「AI」という言葉に言及しており、これは2014年以降で2番目に多い数字となりました。なお、最も多かったのは2023年4〜6月期でした。10

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企業家としての野心

米国のハイテク分野を楽観視できる理由は数多くあると見ています。例えば、米国の産業政策は、超党派インフラ法として知られるインフラ投資・雇用法やインフレ抑制法(IRA)などの立法上の画期的な出来事が、国内の技術力強化に関する政府の野心を浮き彫りにしており、技術革新の加速に貢献しています。

加えて、米国に本質的に企業家精神が備わっており、その精神がテクノロジー競争を推進し、その恩恵を受ける上で独特の立場にあると見ています。今世紀初頭のテクノロジーバブルの崩壊後、多くの投資家が大きな損失を被りましたが、米国の投資家は屈することなく、新たな投資機会を模索し続けました。

アマゾン、マイクロソフト、アップルなど、この時代を生き抜いてきたハイテク企業のいくつかは、今日の巨大企業の仲間入りを果たしています。世界金融危機の最中も、米国の大手ハイテク企業の多くは、デジタル化が構造的な傾向として高まり続けているという長期的な視点に立ち、買収を続けていました。


マグニフィセント・セブンを越えて

しかし、米国のハイテク巨大企業のほかにも、革新的な企業は豊富にあり、巨大企業のような規模には達しないかもしれないものの、非常に強力なビジネスモデルを誇り、将来的に大きな成長を遂げる可能性を秘めています。

例えば、カリフォルニアに本社を置くサービスナウは、企業のデジタルワークフロー管理を支援するクラウドコンピューティング・プラットフォームを提供しています。基本的には、SaaS(Software-as-a-Service、サービスとしてのソフトウェア)事業であり、組織の対内的な部分に焦点を当て、企業がITサービスリクエストや人事プロセスを管理するのを支援するものです。Fortune 500の約85%が同社と取引しており11 、同社の株価は過去1年間で50%以上上昇しました。 12

電子システム設計の専門企業であるケイデンスもカリフォルニアに本社を置き、コストのかかる生産段階に入る前に、半導体やシステムの動作を設計し、シミュレーションできるソフトウェアを提供しています。同社の株価は過去12カ月で38%上昇しました。12

今日のデジタル経済において、サイバーセキュリティが重要な成長分野であることは言うまでもありません。特に、デジタル侵害による被害額は2025年までに年間10.5兆ドルに達すると予想されており、これは2015年の水準から300%の増加となっています。13  こうした背景の下、この分野の市場は 2022年の1540億ドルから、2030年には4250億ドルに成長すると予測されています。14

繰り返しになりますが、米国には、脆弱性評価から管理型セキュリティサービス、さらには損害管理コンサルティングまで幅広いサービスを提供するパロ・アルト・ネットワークスをはじめ、この分野のマーケットリーダーが数多く存在します。この分野の可能性と同社の足場固めにより、同社の株価は過去1年間で55%上昇しました。クラウドセキュリティ企業のゼットスケーラーやテキサスに本社を置くクラウドストライクなど、この分野における米国のリーダー企業は他にも存在しています。

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将来の展望

米国の、そして世界のさまざまな産業が経験しているデジタル変革のレベルとAIの長期的な可能性を考慮すると、米国のハイテク分野の見通しは非常に明るいと思われます。それでも、同分野の株価は、調整することなく最近の上昇に匹敵するような上昇を遂げる可能性は低いと思われ、また、2024年初から足元まで、すべての米大手ハイテク企業の株価が順調に上昇しているわけではありません。しかし、株式投資戦略を通じてポジションを構築する投資家にとっては、下落局面は投資の好機になるかもしれません。もちろん、AI規制のあり方、金融政策、世界的な地政学的緊張、そして11月の米大統領選の結果など、市場にはいまだ多くの不透明感が漂っています。

しかし基本的には、米国のテクノロジー分野、特にAIの進歩がもたらす可能性は、株式投資戦略にとって今後も大きな投資機会の可能性を提供し続けると考えられます。米国は、今後何年にもわたり、テクノロジー革新の中心地となるでしょう。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は5月27日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

本資料で使用している指数について

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

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