クリーンテック戦略月次レター:エネルギーリスクに注目
クリーンテック戦略月次レター(2022年2月の振り返り)
エネルギーリスクに注目
ロシアのウクライナ侵攻により欧州でエネルギーリスク浮上、再生可能エネルギー拡大などでリスク軽減図る
2月の世界株式市場は、金利上昇観測に伴うバリュエーションの調整、月末にかけてはロシアによるウクライナ軍事侵攻の影響への懸念から下落しました。このため、長期の成長見通しに基づいて買われていた銘柄が引き続き売られる展開となり、市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。
クリーンテック戦略ポートフォリオの当月のパフォーマンスは、ウクライナ危機により金利先高観がやや後退したことなどもあり、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)を上回りました。当月は、主として北米の保有銘柄の株価上昇がプラス寄与となりました。
クリーンテック企業に楽観的な見通し
短期的な市場のボラティリティにも関わらず、クリーンテック企業に楽観的な見通しを持てる多くの理由があります。これらの企業の顧客企業は野心的な気候変動対策目標を掲げ、その達成に向けてクリーン・テクノロジーの導入を進めています。また、各国政府はエネルギー移行に対するコミットメントを継続しており、最近では国土保全や生物多様性にも注力しています。
なお、ウクライナ侵攻により欧州への天然ガス供給に混乱が生じ、エネルギーの安定供給に対するリスクが浮上しました。欧州連合(EU)は、天然ガスの40%以上をロシアからの輸入に依存しているからです。ロシアへのエネルギー依存度を低下させるには、エネルギー貯蔵やスマートグリッド・ソリューションとともに再生可能エネルギーの利用を拡大させることがリスク軽減策となります。特にロシアへのエネルギー依存度が高いドイツでは、早くも再生可能エネルギー源法案の議会での通過を加速させました。
天然ガスは化学肥料の原料の一部であり、ロシアが世界第2位の供給国であるカリの供給混乱と相まって、更なる肥料コスト上昇が見込まれます。従って、化学肥料の使用を抑えることを可能とする精密農業にとって追い風になると思われます。また、天然ガスは化石燃料由来の「グレー水素」の生成に用いられています。化石燃料を使わず生成過程で二酸化炭素を排出しない「グリーン水素」の魅力度は、天然ガス価格の高騰と供給網の安全性に対する懸念と相まって、かつてないほどに高まっています。
クリーンテック企業、良好な業績を継続
2021年の決算発表がほぼ終わり、クリーンテック関連企業は概ね受注拡大や堅調な需要見通しを示し、良好な業績を継続しています。サプライチェーンの混乱やコストの上昇は多くの分野で引き続き問題となっていますが、強力な競争力のある企業は、コスト上昇をうまく価格転嫁し、ビジネスモデルの強靭性を発揮しています。一方、価格競争力があっても受注が売上に反映されるまで長く時間を要する企業は、すぐに価格を見直すことが出来ず、短期的な利益の圧迫となっています。サプライチェーンおよびコスト・インフレ問題は少なくとも今年前半は続くと思われることから、当戦略では引き続き、巧みに価格転嫁し、混乱を乗り切る能力を備えた企業に注力して運用を行っています。
EV関連では異業種提携や老舗自動車メーカーの取り組み加速
クリーンテック戦略で注目している電気自動車(EV)関連ではこのほど、ソニーグループとホンダがEV事業提携を発表しました。年内に共同出資会社を設立し、ソニーのセンサー、通信、エンターテインメント技術とホンダの生産技術を活かしたEVを2025年に発売する予定です。また、米フォード・モーターは3月初旬、EV事業をガソリン車事業から分離し、独立採算制にすると発表しました。ガソリン車部門のレガシー処理にとらわれずに、投資をEVに集中して成長を加速する意向です。異業種の提携や老舗自動車メーカーのEV志向の加速が、EVの世界的な普及をさらに後押しすると見込まれます。
なお、当戦略のポートフォリオマネージャーのアマンダ・オトゥールが、食品廃棄物に関する記事(「食品廃棄物問題が気候変動対策において困難な課題である理由」)を執筆していますので、ぜひご覧ください。過剰な食品廃棄物問題の解決は一挙には困難ですが、分散され、かつ多様な解決法があり、それと共に多様な投資機会があることをアマンダは指摘しています。
ポートフォリオの動向
当月は、スマート・エネルギー関連分野が特に堅調なパフォーマンスとなりました。中でもエネルギー効率化ソリューションを手掛けるアメレスコ、スマートグリッドやEV充電施設を提供するアルフェン、風力発電会社のオーステッド、エネルギー効率化プロジェクトへの投資事業を行うハノン・アームストロングなどがプラス寄与となりました。これらの企業はいずれも好調な業績を上げており、先行きの良好な見通しも示しているものの、1月は軟調となっていたためその反動で上昇しました。
一方、車載半導体大手のインフィニオン・テクノロジーズなど前月まで好調だった半導体関連銘柄はマイナス寄与となりました。
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