タカは冬眠せず
キーポイント
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FRB は引き締め姿勢堅持を重ねて明言したが、市場は引き続き来年の利下げを織り込んでいる。
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ECB のタカ派への転換は市場を驚かせ、欧州経済の下振れリスクを増大させ、ユーロ圏のフラグメンテーション(分断)への懸念を高めている。
Macrocastはいったんお休みし、新年1月9日に再開いたします。素晴らしいホリデーシーズンをお過ごしください。
先週は、金融政策の最前線において非常に波乱に富んだ 1 週間となりました。 そして、その波乱は来年の全般的なシナリオにうまく合致しそうです。つまり、2023 年は 2022 年の「鏡像(さかさまの画像)」になる可能性が高いです。2022 年は、より速く、より広範で、より持続的なインフレが特徴となりましたが、実体経済の強靭性は目覚ましいものがありました。 逆に、2023 年には、大幅なディスインフレ(インフレの鎮静化)が予想され、FRBとECBが今世紀初めて景気減速に対応しようとしないことが主な理由で、経済活動に大きな打撃となるでしょう。むしろ、両中央銀行は、インフレをコントロール下に戻すための痛みを伴うが必要な条件として、意図的に景気減速を招こうとしています。
実際、FRB の新しい予測は依然として「悪くても」2023 年に極めて浅い景気後退のみを見込んでいますが、FOMCメンバーのドットプロット(金利予測分布図)の新たなターミナルレート(政策金利の最終到達水準)中央値は、FOMC が非常に深く抑制的領域に踏み込み、そこにとどまる準備ができていることを示唆しています。しかし、総じて投資家はFRBの声に耳を傾けておらず、 フォワードレートは来年下期に 50bps 相当の利下げを織り込み続けています。 ディスインフレの具体的な兆候が現在米国で浮上しつつあると思われますが、これが来年、市場に不快なほど大きな失望を生み出す可能性があります。
一方、ECBの先週の発表は、適度な「タカ派祭り」をもたらしました. 当社は現在、ECBのターミナルレートを 3.25% と予想しており、これは十分に抑制的領域で、さらに上振れリスクがあります。 先週の ECB のコミュニケーションは、前日の FRB のタカ派的発表に呼応しようとしていると読みたくなります。欧州のディスインフレを妨げるユーロ下落を回避したいという願望からでしょう。 これは理解できますが、数カ月前にモーリス・オブストフェルド氏(IMFの元チーフエコノミスト)が嘆いた「利上げの頂上決戦」の構図を助長し、最終的に世界経済に過度の金融引き締めをもたらす可能性があります。その上、このタカ派的な傾向により、欧州経済に吹きつけているすでに深刻な逆風に加え、ECB はユーロ圏でのフラグメンテーションリスクを負っています。 ECB は、来年 6 月に量的引き締め( QT) を再調整する余地を幾分取りました。 これは賢明ですが、十分ではないかもしれません。
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