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視点:チーフエコノミスト

マクロ経済上の「スエズ」(または英国のさらなる落日)

  • 2022年10月17日 (7 分で読めます)

  • 英国のジェレミー・ハント新財務相が、財政政策の再編に着手した。全容は月末までに明らかになろう。

  • 英国の年金基金問題は、他地域の金融不安の潜在的な原因にも関連してくるだろう。

  • 欧米で「(中央銀行)ハト派の再覚醒」が続いているが、政策にすぐに影響が及ぶことはなかろう。


英国の大規模減税策というサプライサイド、トリクルダウン(富裕層が富めば、低所得層にも富が浸透するとの考え方)の試みは、市場の力に屈しました。ハント新財務相は英国の財政政策を再編しますが、その詳細については月末まで待つ必要があるかもしれません(訳注:ハント財務相は17日、トラス政権が打ち出した大規模減税策のほぼ全ての撤回を表明)。政治的な不安定さが残る中、投資家は予算案の最終的な削減を待っており、今後2週間が非常に重要です。ハント財務相就任で市場を取り巻くトーンが変わり、当面は「債券自警団」を鎮めるのに十分なため、イングランド銀行は債券市場への直接介入を控えることができるかもしれません。市場の圧力が長引けば、(中央銀行の市場介入に関する)モラルハザード問題が深刻ではなくなるため、イングランド銀行が介入を再開するハードルは低くなると思われます。

今回の英国のイベントは、「ハードブレグジット(英国のEUからの強硬離脱)」の当然の帰結とも言えます。EUとの貿易摩擦の拡大を考えると、財政的裏付けのない減税とサプライサイド改革が政治的に唯一受け入れられる選択肢として残され、それが金融の現実に衝突しただけとも言えます。1956年のスエズ戦争(当時のエジプト政府がスエズ運河国有化を一方的に宣言。これに対してイギリスは、フランス、イスラエルと共同で運河地帯を占領したが、エジプト国民の抵抗と国際世論の非難により撤退)は、現代の英国がもはや「輝かしい大英帝国」ではないことを知った「現代英国のトラウマ」となりました。英国の財政をめぐる今回の混乱は、英国政府が経済問題に関して単独で舵を取る能力が小さいことを確信させる可能性があります。このような状況下、英国と欧州の関係見直しが始まることは明るい兆しかもしれません。今後、2022年10月を「ブレグジットのピーク」だったと振り返ることになるかもしれません。

英国の年金基金問題は、次の金融不安の潜在的な原因を示唆しています。企業の借り換えギャップの急拡大を注視する必要があります。幸いなことに、企業は低金利期を活用し負債の償還期間を長期化しているため、ショックを吸収する時間が与えられています。しかし、広範な金融引き締めは、成長に打撃を与えるでしょう。それでも、中央銀行はインフレ高進阻止でリスクを取ろうとしています。欧米では「(中央銀行)ハト派の再覚醒」が続いていますが、それは政策にすぐに結びつくものではありません。今のところ、データフローから得られるシグナル(例えば、予想を上回った9月の米国のコアインフレ率)は、モデルから得られる慎重なメッセージより強力です。

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